中国で感じたAI・ロボットの可能性――未来は思ったより近くまで来ていた

今回、深圳と香港で、AIやロボットに関するさまざまな技術を実際に見たり、体験したりする機会があった。

一番感じたのは、「未来の技術を見た」というより、未来だと思っていたものが、すでにかなり現実になっているということだった。

ただし、すべてが完成しているわけではない。

まだ実証段階、実装途中だと感じるものも多かった。

だからこそ、見ながらずっと考えていた。

「これ、別のものと組み合わせたらもっと面白いんじゃないか」と。

運転席に誰もいない車に乗る

まず体験したのが自動運転だ。

昔なら、運転席に誰もいないのに車が勝手に走っていたら、怪談の世界である。

ところが今は、実際にそれに乗ることができる。

運転席の前にはモニターがあり、周囲を走る車などを認識しながら、今どのように走っているのかが表示される。

乗っていて怖いわけではない。

ただ、なんともいえず気持ちが悪い。

「車は人が運転するもの」という感覚が染みついているからだろう。

いっそのこと、昔の「ロボット刑事K」のように、運転席にロボットが座って運転してくれた方が安心するのではないか、と思ったほどだ。

深圳では自動運転タクシーも走っているが、街中どこでも自由に走っているわけではないようだった。

決められたエリア、決められたルートでの運行が中心で、まだ社会実装の途中という印象を受けた。

未来は来ている。

でも、いきなり全面的に普及するのではなく、限られた場所から少しずつ始まっている。

そんな感じだった。

ドローンでアイスティーが届いた

ドローンによるデリバリーも体験した。

今回頼んだのはアイスティー。

専用エリアと専用設備を使う仕組みなので、これもまだどこへでも届けてくれるわけではない。

それでも驚いたのは、飲み物をこぼさずに運んできたことだ。

空を飛んで運ぶのだから、もっと揺れるものだと思っていた。

でも、よく考えてみると、路面を走る車と違って、空には段差や凹凸がない。

むしろ一定の高度を保って飛べるので、飲み物を運ぶには意外と相性がいいのかもしれない。

「ドローンで配送できる」という話を聞くのと、実際に飲み物が届くのを見るのとでは、印象がまったく違う。

人を運ぶのが自動運転。

物を運ぶのがドローン。

移動も物流も、人が直接動かさなくても成り立つ時代に近づいている。

人間を置き換えるだけではない

今回、特に可能性を感じたのがスマートウェアだった。

身体に装着すると、自分が動こうとする方向を機械が支えてくれる。

実際につけてみると、身体がかなり軽く感じた。

これは建設や物流などの力仕事をする人の負担軽減にも使えるだろうし、高齢者の日常生活のサポートにも使えると思う。

もちろん、介護のように身体への負担が大きい仕事にも活用できそうだ。

さらに仕事だけではない。

趣味でいえば、登山のように足腰への負担が大きい場面でも使えるかもしれない。

人間の代わりに動くのではなく、人間が動く力そのものを支えてくれる。

AIやロボットというと、すぐに「人間の仕事を奪う」という話になりがちだ。

しかし、こういう技術を見ると、むしろ人間の能力を補うロボットの方が重要になるのではないかと思う。

日本はこれからさらに高齢化が進み、人手不足も続く。

こうした技術は、日本にこそ必要になるかもしれない。

脳波でドローンを動かす

自分の脳波でドローンを動かす体験もした。

頭にセンサーをつけ、意識を集中させて命令を出す。

さらに身体や頭の向きで方向を決めるような仕組みだった。

これが、なかなか難しい。

考えただけで自由自在に動く、というほど簡単ではない。

それでも、自分の脳波を読み取って機械が反応するという体験は面白かった。

これが進化すれば、身体を自由に動かせない人が機械を操作することも可能になるかもしれない。

人と機械の境界は、これからますます薄くなっていくのだろう。

小さな店ほどロボットが活躍するかもしれない

露店型のテイクアウト店では、ロボットがコーヒーを入れていた。

しかも、ただ作るだけではない。

ロボットが喋り、接客もしていた。

ほかにも、お茶を入れて販売するロボットや、アイスクリームを作るロボットもあった。

こちらは接客というより、自動販売機に近い。

お金を入れると、ロボットが自動でお茶を入れたり、アイスクリームを作ったりして、その場で提供してくれる。

これまでの自動販売機が「完成した商品を出す機械」だったとすれば、これからは注文を受けて、その場で商品を作って提供する自動販売機に変わっていくのかもしれない。

そして私は、むしろ大きな店より、小さな店の方がロボットを活用しやすいのではないかと思った。

例えば、カウンターだけの小さな店や、席数の少ないカラオケバー。

注文を取る。

ドリンクを作る。

会話をする。

会計をする。

こうしたことをロボットが担当できれば、小さな店の運営そのものが変わる。

私なら、ただ無言で働くロボットではなく、『ONE PIECE』のブルックのように、よく喋って、少しユーモアがあって、店を盛り上げてくれるロボットが欲しい。

ロボットは人件費を減らすためだけの存在ではない。

店の名物になる可能性もある。

マッサージロボットは意外とうまい

マッサージロボットも体験した。

マッサージチェアのように座って施術する機械は珍しくないが、今回はうつ伏せになった身体を上から押すタイプだった。

これが意外とうまい。

力加減もよく、ツボを押すポイントもかなり的確だった。

ただ、現状では一度に押すのは一か所だった。

そこで思った。

だったら、複数のアームをつけて、肩、背中、腰などを同時に押せるようにしたらどうだろう。

名づけて「観音マッサージロボット」。

千手観音のように複数の腕で施術する。

さらに、機械の前に立つと身体の状態を分析してくれるAIもあった。

どういう仕組みで測っているのかは分からなかったが、もし一定の精度で身体の状態を把握できるのであれば、マッサージロボットと組み合わせれば面白い。

AIが身体の状態を見て、その人に合わせて施術する。

そんなサービスができれば、マッサージの世界もかなり変わるかもしれない。

ロボットは先生にも練習相手にもなる

楽器の体験も面白かった。

「ここを押せばこの音が出る」と示してくれるので、その通りに操作すれば正しい音が出る。

これは、音楽が苦手だと思っている人にとって、とてもいい仕組みだと思った。

「自分には無理」と思っている人でも、とりあえず音を出すことができる。

そこで面白いと感じれば、音楽を好きになるきっかけになる。

人の動きを影で示し、その型を真似るような仕組みもあった。

イメージとしては太極拳だが、ヨガ、空手、ダンスなどにも応用できそうだ。

スポーツでは卓球のロボットもあった。

サッカーのシュートを体験できるものもある。

卓球ができるなら、テニスやバドミントンにも広げられるだろう。

AIやロボットが、先生であり、コーチであり、練習相手になる。

そんな時代も近いのかもしれない。

ロボットは「可愛い」も大切になる

ペットロボットの犬もいた。

名前を呼ぶと反応し、お手をする。

目がハートマークになったりもする。

これが、なかなか可愛い。

こうなると、ロボットは「役に立つかどうか」だけではない。

一緒にいて楽しい。

癒やされる。

愛着がわく。

そんな価値も出てくる。

私は犬型ロボットより、『ONE PIECE』のチョッパーのようなロボットが欲しい。

ヒューマノイドの進化には驚いた

ヒューマノイドロボットも印象に残った。

きれいな女性の姿をしたヒューマノイドロボットが複数あり、もちろん会話もできる。

ガイドの話では、こうしたロボットと結婚した日本人もいるらしい。

真偽はともかく、そんな話が出るくらい、人間に近い存在として捉えられるようになってきたということなのだろう。

ヒューマノイドロボットのダンスも見た。

これには驚いた。

とにかく動きが速く、スムーズだった。

少し前まで、ヒューマノイドロボットは「歩けるだけですごい」というイメージだった。

それが今では、かなり人間らしく身体全体を動かしている。

進化のスピードは想像以上だ。

そこで、ふと思った。

自動運転の車は、運転席に誰もいないから少し気持ち悪く感じた。

だったら、運転席に自分好みのヒューマノイドロボットを座らせたらどうだろう。

実際の運転は自動運転システムが行うとしても、運転席にはヒューマノイドが座り、会話をしながら目的地まで連れていってくれる。

その方が、人間にとっては意外と安心できるかもしれない。

技術的には人を必要としなくなっても、心理的には「誰かがそこにいる」ことを求める。

AIやロボットの未来では、性能だけでなく、こうした人間の感覚まで考える必要があるのかもしれない。

ものづくりのスピードも変わる

レーザープリンターを使って、小物に好きな写真を印刷する体験もした。

写真を選び、パソコンで読み取り、データを送り、小物を機械の下にセットする。

わずか5分程度で完成した。

速いだけではない。

正確だった。

これまでオリジナル商品を作るとなると、ある程度の時間やロットが必要というイメージがあった。

しかし、こうした機械が普及すれば、1個だけの商品を、その場ですぐ作ることも珍しくなくなるだろう。

「未来はこう変わる」という説明の中では、3Dプリンターで食事を作るようになる可能性も紹介されていた。

もし将来、栄養やカロリー、やわらかさまで一人ひとりに合わせられるようになれば、高齢者向けや病院食、介護食などにも応用できそうだ。

ものづくりだけでなく、食づくりまで個別化していく。

そんな未来も考えられているようだ。

交通も大きく変わるかもしれない

未来の交通では、同じ形のバスのような車両が、くっついたり離れたりする仕組みもあった。

これを見て、自動運転と組み合わせれば面白いと思った。

利用者が多い時間帯は連結し、少ない時間帯は分離する。

目的地に応じて途中で分かれることもできるかもしれない。

もし実現すれば、都市の交通渋滞の緩和や、地方の交通効率化にも使える可能性がある。

また、「未来はこう変わる」という説明の中では、空飛ぶ車をタクシーとして使う構想も紹介されていた。

私は、この使い方は面白いと思った。

自家用車として誰もが自由に飛ぶとなると、かなりハードルが高い。

しかし、空港と都心、観光地、離島など、決められた場所を結ぶタクシーなら、使い道はかなり具体的になる。

新しい技術は、最初から何でもできる必要はない。

使う場所と用途を限定すれば、実用化しやすくなる。

自動運転も、ドローン配送も、空飛ぶタクシーも、そこは共通しているように感じた。

ちなみに、車が変形するようなものもあった。

これは正直なところ、「未来の車」というより、大きなラジコンを見ているような感覚だった。

技術的に面白いものと、すぐに使い道が思いつくものは、必ずしも同じではない。

未来は「組み合わせ」が面白い

今回、中国でさまざまなAIやロボットを見て、一番面白かったのは技術そのものだけではない。

ずっと考えていたのは、

「これとこれを組み合わせたら、もっと面白いことができるんじゃないか」

ということだった。

健康分析AIとマッサージロボット。

接客ロボットと小さなバー。

太極拳のAIとヨガや空手。

卓球ロボットとテニスやバドミントン。

3Dプリンターと一人ひとりの健康データ。

自動運転とヒューマノイド。

一つひとつの技術は、まだ発展途中のものも多い。

でも、組み合わせることで、新しいサービスや仕事が生まれる可能性がある。

AIやロボットは、人間の仕事を奪うだけのものではない。

人の代わりに働く。

人の身体を助ける。

人に教える。

人を楽しませる。

人の可能性を広げる。

そして、人と一緒に新しい仕事やサービスを作っていく。

未来を怖がるのか、使う側に回るのか

AIやロボットが急速に進化していく未来に対しては、肯定的な人もいれば、悲観的な人もいる。

私は、その違いは「未来をどう見るか」にあるのではないかと思う。

肯定的な人は、

「この技術をどう活用したら、自分の仕事や生活をもっと良くできるだろう」

と考える。

だから情報を集める。

試してみる。

そして、変化が本格的にやってくる前から少しずつ準備を始める。

一方で、未来を悲観的に見る人は、

「これが普及したら、自分の仕事はどうなるのだろう」
「自分は必要なくなるのではないか」

という不安を先に感じるのかもしれない。

もちろん、新しい技術に不安を感じること自体は当然だと思う。

ただ、怖がっているだけでは未来は止まってくれない。

今回、中国で見た自動運転も、ドローンも、ヒューマノイドも、スマートウェアも、まだ完成形ではない。

それでも確実に前へ進んでいる。

だったら私は、

「なくなる仕事は何だろう」

と考えるだけではなく、

「これを使って何ができるだろう」

と考える側でいたい。

未来は、自分の都合に合わせて来てくれるわけではない。

変化を怖がりながら待つ人生と、

変化を知り、それをどう使うか考えながら準備する人生。

いったい、どちらの人生が面白いだろうか。