補助金の賃上げ要件が変わる。その背景にあるものとは?
おはようございます。
笑顔商店の高柳です。
最近、中小企業庁の補助金制度に、ある変化が起きていることをご存じでしょうか。
それは、賃上げ要件の算定方法が、これまで以上に明確になってきていることです。
今回は、この変化から見えてくる補助金制度の今後について考えてみたいと思います。
■ 給与支給総額から「一人当たり」へ
これまで多くの補助金では、賃上げ要件として「給与支給総額の増加」が求められてきました。
ところが最近は、「一人当たり給与支給総額の増加」を重視する傾向が強まっています。
例えば、新事業進出・ものづくり補助金では、給与支給総額の成長率について、一人当たりで判定する方式に限定されました。
また、省力化投資補助金でも、一人当たり給与支給総額の増加が重要な要件となっています。
さらに注目したいのは、算定対象となる従業員や期間についても、細かな基準が設けられるようになっていることです。
各年度において全月分の給与を受け取った従業員を対象とするものや、一定の条件下で継続勤務している同一従業員を比較対象とするものなど、補助金によって取扱いは異なります。
では、なぜここまで細かく規定するようになったのでしょうか。
■ 賃上げ未達成の判定には膨大な事務負担がある
私は長年、補助金申請を支援してきましたが、支援先の中には賃上げ要件を達成できなかった企業もあります。
ただし、そのほとんどは最終的に補助金の返還が免除されました。
問題は、そこに至るまでの手続きです。
賃上げ要件を達成できなかった場合、事務局は未達成の理由を確認し、返還免除の要件に該当するかどうかを個別に判断しなければなりません。
例えば、従業員の退職や新規採用、休職、業績の悪化など、企業によって事情はさまざまです。
事業者側も説明資料を準備し、事務局からの問い合わせに対応する必要があります。
最終的に返還免除となる場合でも、こうした確認作業は発生します。
しかも、事務局の運営費用にも公的な予算が使われています。
本来、中小企業の成長や生産性向上を支援するための制度なのに、その運営に多大な時間と費用を要しているとすれば、改善の余地があるのではないでしょうか。
■ 基準の明確化は事務局の省力化につながる
今回の算定基準の明確化には、こうした事務負担を軽減する狙いもあるのではないかと私は考えています。
対象となる従業員、給与の算定期間、比較方法などが明確になれば、事業者と事務局の間で解釈が食い違う場面を減らすことができます。
さらに、計算方法が統一されれば、将来的にはシステムによる自動判定も可能になるでしょう。
例えば、従業員ごとの給与データを入力するだけで、対象者の抽出から賃上げ率の計算、達成状況の判定まで自動処理する仕組みです。
もちろん、特殊な事情や返還免除の判断など、人による確認が必要な部分は残ります。
しかし、通常の判定をシステム化し、例外的な案件だけ人が対応するようになれば、事務局の負担は大幅に軽減できるはずです。
■ 補助金制度自体も生産性向上の時代へ
私は、今回の変化はまだ試行錯誤の段階だと感じています。
ただ、算定基準の明確化、判定業務の標準化、そしてシステム化という方向性は、今後も続くのではないでしょうか。
中小企業に対してAIやデジタル技術による省力化、生産性向上を求めている補助金制度。
その制度を運営する側もまた、業務の効率化を進める必要があります。
補助金の費用対効果を考える際には、採択企業が生み出す成果だけでなく、制度を運営するためのコストにも目を向けるべきでしょう。
補助金制度そのものが生産性を高めることで、限られた予算を、より多くの中小企業の成長支援に振り向けられるようになる。
そんな方向に制度が進化していくことを期待しています。
今回はここまでとします。
最後までお読みいただき有難うございます。
笑顔商店
高柳和浩
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