あなたの中の富士山は、消えていない。
今年の正月、富士山を見に山中湖を訪れた。
山中湖から眺める富士山は、想像以上に大きかった。
目の前に堂々とそびえ立つ、その圧倒的な存在感。
日本一の山であることはもちろん知っていた。しかし、実際に間近で見ると、改めてその大きさに驚かされた。
そして、私はそこで一つのことに衝撃を受けた。
これほど大きな富士山が、雲がかかるだけで見えなくなってしまうということだ。
当たり前の話である。
天気が悪ければ富士山は見えない。そんなことは誰でも知っている。
おそらく多くの人は、「今日は曇っているから富士山が見えないね」で終わるだろう。
ところが、私はそうではなかった。
あれほど大きく、しかも目の前にある富士山が、雲によって見えなくなる。
富士山がなくなったわけでも、どこかへ移動したわけでもない。
ただ、雲に覆われているだけなのだ。
その当たり前の自然現象が、私にはとても不思議で、衝撃的だった。
そして、そのとき思った。
人間の心も、これと同じではないだろうか。
人の心にも雲がかかる
私たちは誰でも、夢や目標を持っている。
将来こうなりたい。
こんな仕事をしてみたい。
家族と幸せに暮らしたい。
もっと自由な人生を送りたい。
その内容は人によって違うだろう。
しかし、心の中には、それぞれが目指す富士山がある。
ところが、日々の生活の中では、いろいろなことが起こる。
仕事がうまくいかなかったり、誰かに腹を立てたり、人間関係で悩んだり。
将来への不安を感じることもあれば、他人と比較して自信を失うこともある。
そうして、怒りや不安、嫉妬、思い込み、マイナス思考といった感情が、心に雲をつくり出していく。
雲が薄いうちは、まだ富士山が見えている。
ところが、その雲がだんだん厚くなっていくと、いつの間にか富士山が見えなくなってしまう。
本当は実現したかった夢。
ずっと目指してきた目標。
それらが、まるで最初から存在しなかったかのように感じられてしまう。
しかし、ここで忘れてはいけないことがある。
富士山が見えなくなったからといって、富士山そのものが消えたわけではない。
人間の夢や目標も同じではないだろうか。
一時的に見失っているだけで、心の奥にある本当に叶えたいという気持ちは、変わっていないのかもしれない。
誰もが自分の中に富士山を持っている
私は、誰もが自分の中に富士山を持っていると思っている。
ただ、その富士山に気づいている人ばかりではない。
自分が本当にやりたいことがわからない。
何を目標に生きていけばよいのかわからない。
そんな人も少なくないだろう。
日々の仕事や生活に追われ、自分の夢について考える時間さえない人もいる。
だから、富士山が雲に隠れている人だけでなく、そもそも自分の富士山の存在に気づいていない人もいるのだ。
もちろん、富士山の大きさや形は人それぞれでよい。
大きな会社をつくることが夢の人もいれば、家族との穏やかな暮らしを望む人もいる。
世界を旅したい人もいれば、誰かの役に立つ仕事をしたい人もいる。
他人の富士山と比べる必要はない。
大切なのは、自分にとっての富士山が何なのかを知ることだと思う。
心に雲をかけないための予防法
では、どうすれば自分の富士山を見失わずに済むのだろうか。
私は、心の状態を整える方法には、大きく分けて「予防」と「治療」があると考えている。
まずは予防である。
そのために最初に行うことは、自分が本当に叶えたい夢や目標を明確にすることだ。
そして、それを文字にしたり、絵や画像にしたりして、いつでも見える場所に置いておく。
あるいは、自分の夢や目標を音声にして、毎日聞くのもよいだろう。
私たちは、日々さまざまな情報や出来事に接している。
その中で、どうしても目の前の問題に意識を奪われてしまう。
だからこそ、自分が本当に目指しているものを、繰り返し思い出す仕組みが必要なのだ。
夢や目標を明確にして、毎日意識する。
これは単にモチベーションを高めるためだけではない。
心に雲がかかっても、自分の富士山を見失わないための予防策なのである。
雲がかかってしまったら、どうすればよいのか
どれほど予防をしていても、心に雲がかかることはある。
人間なのだから、それは仕方がない。
そんなときには、第三者の力を借りることも有効だと思う。
その方法として、カウンセリング、コーチング、コンサルティング、そしてメンタリングがある。
これらは似ているようで、それぞれ役割が違う。
私なりに富士山の雲に例えてみたい。
カウンセリングは、厚くなった雲を少しずつ晴らしていくための支援である。
強い不安や怒り、落ち込みなどによって心がマイナスの状態にあるとき、まずはその心を整えることが必要になる。
無理に前向きになろうとしても、なかなかうまくいかない。
そんなときには、話を聞いてもらい、感情や考えを整理しながら、少しずつ心の負担を軽くしていく。
コーチングは、自分自身の力で雲を晴らしていくための支援である。
心の状態がある程度整い、前に進もうという気持ちがある。
しかし、思い込みなどによって視野が狭くなったり、何をすればよいのかわからなくなったりすることがある。
そんなとき、コーチとの対話を通じて自分自身で気づき、行動する力を引き出していく。
コンサルティングは、雲をより早く、効果的に晴らすための具体的な手段を提供する支援である。
夢や目標は明確で、実現したい気持ちもある。
しかし、知識や経験が不足していたり、具体的な解決策が見つからなかったりする。
そんなときには、専門家の知識や経験を活用することで、問題解決までの時間を短縮できる。
そして、もう一つがメンタリングである。
メンターは、必ずしも明確な目標達成を目的としない。
相手の話を聞き、自分の経験や事例を伝えながら、本人が何かに気づくきっかけをつくる存在だ。
「こうしなさい」「ああしなさい」と答えを押しつけるのではない。
まだ自分の富士山に気づいていない人が、その存在を発見するきっかけになることもあるだろう。
もちろん、これらの支援には重なる部分もあるし、心身の不調が強い場合には医療的な支援が必要になることもある。
大切なのは、今の自分の状態に合った支援を受けることだと思う。
人生で最ももったいないもの
ここまで考えてきて、私が最も大切だと思うことがある。
それは時間である。
人生の時間には限りがある。
お金は失っても、また稼ぐことができる。
仕事で失敗しても、やり直すことができる。
しかし、過ぎ去った時間だけは取り戻すことができない。
怒りや不安にとらわれ、何日も悩み続ける。
過去の失敗を引きずり、前に進めなくなる。
自分には無理だと思い込み、本当はやりたかったことを諦めてしまう。
もちろん、悩む時間がすべて無駄だとは思わない。
悩んだからこそ得られる気づきもあるし、立ち止まる時間が必要なこともある。
しかし、同じところで何日も、何か月も立ち止まり続けるのは、やはりもったいない。
例えば、ある出来事によって心に雲がかかったとしよう。
その雲を晴らすまでに1か月かかる人もいれば、1週間で元の状態に戻れる人もいる。
あるいは、1日で気持ちを切り替えられる人もいるかもしれない。
この違いは、人生全体で考えると非常に大きい。
夢や目標を実現するためには、努力や能力、行動力も大切だろう。
しかし、それだけではない。
夢や目標を見失っている時間を、いかに短くできるか。
これも人生を豊かにするための大切な能力ではないだろうか。
そのために、予防する方法を身につけておく。
そして、自分一人では雲を晴らせないときには、誰かの力を借りればよい。
何も、一人ですべてを解決する必要はないのだから。
あなたの中の富士山は、消えていない
今年の正月、山中湖から眺めた富士山。
あれから9か月以上が過ぎたというのに、私は今でも、あのとき感じた衝撃を繰り返し思い出している。
あれほど大きな富士山が、雲がかかるだけで見えなくなる。
本当に不思議なことだと思う。
でも、雲の向こうには、いつも富士山がある。
雲が晴れれば、再びあの雄大な姿を見せてくれる。
人間の心も同じだろう。
怒りや不安、思い込みによって、夢や目標を見失うことはある。
それでも、心の奥にある本当に叶えたいという気持ちは、消えていないのかもしれない。
そして、まだ自分の富士山に気づいていない人もいる。
私は、誰もが自分だけの富士山を持っていると信じている。
だから、もし今、夢や目標が見えなくなっているのなら、諦める前に少し考えてみてほしい。
それは本当になくなってしまったのだろうか。
それとも、ただ心に雲がかかっているだけなのだろうか。
あなたの中の富士山は、消えていない。
そして、その富士山を見つけるのも、再び見えるようにするのも、決して遅くはない。
あなたの中の富士山は、今、見えていますか?
