仕事は何のためにするのか? 収入だけでは得られない仕事の喜

皆さんは、何のために仕事をしていますか?

生活のため。家族を養うため。お金を稼ぐため。あるいは、自分の夢を実現するため。

人によって答えはいろいろあるでしょう。

私自身は、仕事の目的は、まず収入を得ることだと考えています。

どれほど素晴らしい仕事でも、収入がなければ生活は成り立ちません。

しかし、同じように収入を得るのであれば、ただ生活のために働くよりも、自分が楽しめる仕事をした方がいいのではないでしょうか。

私は長年、経営コンサルタントとして多くの経営者や起業を目指す方々と接してきました。

その経験を通じて感じるのは、仕事に対する考え方一つで、その人の働き方も、人生の充実度も大きく変わってくるということです。

仕事選びは「何となく好き」でいい

仕事を選ぶとき、最初から明確な夢や目標を持っている必要はないと思います。

人と話すことが何となく好きなら、接客の仕事。

体を動かすことが好きなら、体を使う仕事。

車の運転が好きなら、運転に関わる仕事。

パソコンが好きなら、IT関係の仕事。

最初は、その程度の「何となく好き」で構わないのです。

仕事をしてみなければ、自分に向いているかどうかもわかりません。

大切なのは、興味を持ったことを実際に経験してみること。

その中で、思っていた以上に面白いと感じる仕事に出会うこともあれば、反対に、自分には合わないと気づくこともあるでしょう。

それも大切な経験です。

ただ、ここで一つ考えてみてほしいことがあります。

好きだと思える仕事に就いたとしても、それだけで仕事が楽しくなるとは限りません。

そこには、もう一つ大切なものがあると思うのです。

お金をいただいて「ありがとう」と言われる幸せ

仕事の対価として収入を得ることは、働く人にとって当然の権利です。

しかし、それに加えて、お客様から「ありがとう」と感謝されたら、どうでしょう。

例えば、接客の仕事で「あなたが担当してくれてよかった」と言われる。

営業の仕事で「あなたに相談して本当によかった」と言われる。

直接お客様と接しない仕事であっても、同じことです。

製造や事務の仕事で、周囲のスタッフから「助かったよ」「ありがとう」と言われることもあるでしょう。

考えてみれば、不思議なことです。

こちらは仕事をして、お金をいただいている。

それなのに、お金を払ってくださったお客様から、感謝されるのです。

私は、これこそが仕事の大きな喜びの一つだと思っています。

人は、自分の存在や貢献が認められると嬉しくなるものです。

そして、その喜びが「もっと役に立ちたい」「もっと良い仕事がしたい」という気持ちにつながっていく。

もちろん、誰もが感謝の言葉を口にしてくれるわけではありません。それでも、自分の仕事が誰かの役に立っていると実感できれば、仕事への向き合い方は変わってくるのではないでしょうか。

ただし、そのためには、本人の努力だけでなく、会社の環境も重要になります。

どれほど能力があっても、それを発揮する機会がなければ、周囲から認められることは難しいからです。

短所だと思っていたことが、実は才能かもしれない

私は、多くの人が自分自身の素質や才能を十分に理解していないのではないかと思っています。

なぜなら、自分にとって当たり前にできることは、特別な能力だとは感じにくいからです。

それだけではありません。

本来は才能といえるものが、短所として受け取られていることもあります。

例えば、思いついたらすぐに行動する人。

周囲からは「せっかちだ」「もう少し落ち着きなさい」と言われるかもしれません。

すると本人は、その性格を直そうとします。

しかし、見方を変えれば、人より早く行動できるという素晴らしい能力でもあるのです。

私は、人の素質や才能には陰陽があると考えています。

同じ特性でも、発揮する場面によって長所にも短所にもなる。

もちろん、周囲に迷惑をかける行動は改善する必要があります。

しかし、短所とされる部分だけに目を向け、その特性そのものを抑え込んでしまうと、本来の才能まで発揮しにくくなることがあります。

だからこそ、第三者の存在が重要になるのです。

単に「あなたは行動力がありますね」と褒められても、本人はピンとこないかもしれません。

でも、「あなたはせっかちだと思っているかもしれないけれど、それは人より早く行動できるという才能でもあるんですよ」と言われたら、どうでしょう。

「えっ、そうなの?」

と、それまでの自分に対する見方が変わるかもしれません。

私は、才能を見抜くことと、その才能に本人が気づくように伝えることは、違う能力だと思っています。

そして、人を育てるうえでは、後者が特に重要になることがあるのです。

「できること」より「やりたいこと」が人を動かす

ただし、ここで忘れてはならないことがあります。

それは、できることと、やりたいことは違うということです。

数字に強いからといって、経理の仕事をしたいとは限りません。

人の相談に乗ることが得意だからといって、相談を受ける仕事をしたいとも限りません。

どれほど優れた才能であっても、本人がやりたいと思わなければ、その能力を積極的に発揮しようとは思わないかもしれません。

私は、最も大きな力を生み出すのは「やりたい」という気持ちだと考えています。

本当にやりたいことが見つかれば、人は夢中になります。

誰かに勉強しなさいと言われなくても、自分から学び、工夫し、経験を重ねる。

他人から見れば大変な努力に見えても、本人にとっては、それが楽しくて仕方がない。

だから、続けられるのです。

そして、続けることで能力が高まり、さらに人の役に立てるようになる。

この循環が生まれれば、仕事はますます面白くなっていくでしょう。

私は以前から、この本当にやりたいことを「心の中の富士山」に例えています。

誰の心の中にも、自分が登りたい富士山がある。

しかし、その富士山が厚い雲に覆われていて、自分では見えていない人もいます。

だから、誰かがその雲を少し払ってあげる。

すると、本人が自分の富士山に気づくことがあるのです。

大切なのは、第三者が勝手に山を決めることではありません。

本人が本当に登りたい山を見つけること。

そして、その山に登るために、自分が持っている素質や才能を最大限に生かすことなのです。

自分の才能も、他人の才能も生かす

自分が登りたい富士山が見つかったとしても、そこに登るための能力を、すべて自分で身につける必要はありません。

私は、苦手なことを克服するために多くの時間を使うよりも、自分が得意なことをさらに伸ばした方が、大きな成果につながる場合があると思っています。

足りない部分は、それを得意とする人の力を借りればいいのです。

これは、経営者にも当てはまります。

例えば、営業も経理も事務も、何でもできる経営者がいたとします。

しかし、経営者がすべてを自分でやることが、会社にとって最善とは限りません。

今は十分にできなくても、その仕事に向いている素質や才能を持った従業員がいるかもしれないからです。

その可能性を見つけ、仕事を任せ、経験を積む機会をつくる。

そうすることで、従業員は自分の能力を発揮できるようになり、さらに成長していきます。

一方、経営者は自分が最も得意とする仕事に集中できる。

その結果、会社全体として、より大きな成果を生み出せるようになるのではないでしょうか。

ここで重要なのは、今できることだけで人を判断しないことです。

今はできなくても、適切な機会と経験によって、能力が開花することはあります。

自分の才能を最大限に生かすと同時に、他人の才能も最大限に生かす。

私は、そのような仕事の進め方が、本人にとっても、周囲の人にとっても、そして会社にとっても望ましいと考えています。

やりたい仕事がなければ、自分でつくればいい

さて、自分の素質や才能に気づき、本当にやりたいことが見えてきたとします。

その仕事が世の中にあるのであれば、そこで働けばいいと思います。

自分の才能を生かし、人の役に立ち、収入を得る。

会社員であっても、それが実現できるのであれば、素晴らしいことです。

しかし、自分が本当にやりたい仕事が世の中になかったら、どうでしょう。

私は、なければ自分でつくればいいと思っています。

それが、起業です。

もちろん、起業にはリスクがあります。

自分がやりたいという気持ちだけでは、事業を継続することはできません。

お客様が求める価値を提供し、その対価をいただく必要があります。

ただ、自分が夢中になれることがあり、それによって人の役に立てる可能性があるのであれば、事業として実現する道を考えてみてもいいのではないでしょうか。

そして、起業するからといって、何でも自分でやる必要はありません。

自分が得意なことに集中し、足りない部分は、それが得意な人の力を借りる。

そうやって事業をつくり、仕組みを整えていけば、一人では実現できなかったことも可能になっていきます。

起業すること自体が目的なのではありません。

自分が本当にやりたいことを実現するための、一つの選択肢なのです。

仕事の喜びが、やがて誇りに変わる

最初に、仕事の目的は収入を得ることだと書きました。

その考えは、今も変わりません。

ただ、仕事を通じて得られるものは、収入だけではないと思っています。

自分の好きなことに夢中になり、学び、工夫する。

その才能を生かして人の役に立ち、「ありがとう」と感謝される。

その喜びが、さらに良い仕事をしたいという意欲につながり、やがて仕事への誇りになっていく。

そして、誇りを持てる仕事だからこそ、長く続けたいと思う。

自分だけで終わらせるのではなく、次の世代にも伝えていきたいと思うようになる。

私は、そこまで仕事を深められたら、とても幸せなことではないかと思うのです。

これは経営者だけの話ではありません。

会社員であっても、自分が培ってきた技術や経験を後輩に伝えることができます。

また、経営者や上司が従業員の才能に気づき、その可能性を引き出すことができれば、仕事に喜びや誇りを持つ人がもっと増えるかもしれません。

私は、世の中には、自分の才能に気づかないまま働いている人が、まだたくさんいるように感じています。

その人たちが、自分の好きなことや得意なことに気づき、それを仕事に生かせるようになったら、どうでしょう。

仕事を楽しむ人が増え、感謝する機会も、感謝される機会も増えていく。

その積み重ねが、社会をより良い方向へ発展させる力になるのではないでしょうか。

もちろん、これはあくまで私自身の仕事に対する考え方です。

生活のために働くことも、安定を大切にすることも、決して悪いことではありません。

ただ、どうせ人生の多くの時間を仕事に使うのであれば、自分の才能を生かして、夢中になれる仕事をした方が楽しいと思うのです。

そして、人の役に立ち、感謝され、誇りを持てる仕事ができれば、人生はもっと豊かになるのではないでしょうか。

あなたは今の仕事を、楽しいと思っていますか?

そして、あなたが本当にやりたいことは、何でしょうか?