13年で街はここまで変わる。成長するマレーシアで見えた日本の可能性

今回のマレーシア旅行では、クアラルンプールを拠点に、ジョホールバル、イポーにも足を延ばした。

同じマレーシアでも、街の表情はまったく違う。

高層ビルが立ち並ぶ首都クアラルンプール。

シンガポールと国境を接し、急速に発展するジョホールバル。

そして、錫鉱山の歴史と石灰岩の自然が残るイポー。

三つの街を歩いて感じたのは、

「成長している国には、街そのものに勢いがある」

ということだった。

そして同時に、

**成長するマレーシアと、成熟した日本。

この二つの国の違いの中に、新しい仕事が生まれるのではないか。**

そんなことを考える旅にもなった。

街を歩くだけで、成長が分かる

マレーシアは今も高い経済成長を続けている。

2026年4~6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.0%。上半期でも5.7%だった。

日本にいると、5%、6%という経済成長率はかなり大きな数字に感じる。

ただ、数字を知らなくても、実際に街を歩けば成長の勢いは分かる。

建設中のビルが多い。

商業施設には人が集まっている。

そして何より、若い人や子どもを連れた家族が多い。

人口が増え、所得が上がり、

「これから生活がもっと良くなっていく」

という期待が、街の空気そのものをつくっているように感じた。

日本は逆に、人口減少と少子高齢化が進んでいる。

もちろん成熟した社会には成熟した社会の良さがある。

それでも、成長する国を実際に歩くと、

人が増えていく社会と、人が減っていく社会では、街の空気そのものが違う

ことを強く感じる。

13年ぶりに再会した旧友

今回、初めてジョホールバルを訪れた。

そこで、かつて同じセミナーで学んだ旧友と13年ぶりに再会した。

彼女はこの13年間、マレーシアで子育てをしながら、ジョホールバルの変化をずっと見てきた。

話を聞いて驚いた。

13年前は、今ほど街が整備されておらず、場所によってはスラム街のように感じるところもあったという。

それが今では、高層住宅が建ち、商業施設ができ、街の姿が大きく変わっている。

私は現在のジョホールバルしか知らない。

だから、

「この街が13年でここまで変わった」

という話は、とても印象に残った。

13年。

一人の人生で考えれば長い。

しかし都市の歴史から見れば、ほんの短い時間である。

その短い間に街の輪郭そのものが変わってしまう。

日本に住んでいると、なかなか体験できないスピードだと思う。

国境は「壁」ではなく「商売の場所」にもなる

ジョホールバルの面白さは、すぐ隣がシンガポールだということにもある。

橋を渡れば、そこは別の国だ。

シンガポールで働き、マレーシア側に住む人もいる。

人も、物も、資本も、国境を越えて動いている。

国境というと、どうしても「国を分ける線」という印象がある。

しかし実際に現地へ行ってみると、

二つの国が接する場所だからこそ、新しい商売が生まれる

ということがよく分かる。

現在、ジョホール州では、シンガポールと連携した「ジョホール・シンガポール特別経済区(JS-SEZ)」を軸に、大規模な産業開発も進められている。

半導体などの高付加価値産業も、その一つだ。

マレーシアは半導体の組立、検査、パッケージングなどの後工程に強い。

一方、日本には半導体製造装置や材料などの技術がある。

つまり、

日本とマレーシアは、単に仕事を奪い合う関係ではない。

お互いの強みを組み合わせる余地がある。

これは半導体に限った話ではないと思う。

急成長する国には、次の課題が生まれる

ジョホールバルに長く住む旧友から、こんな話も聞いた。

住宅の床に貼られたタイルが、暑さなどの影響で剥がれ、床が盛り上がってくることがあるという。

彼女の住まいだけでなく、知人宅でも起きているそうだ。

これを聞いて、

「なるほど。成長の次には品質が必要になるんだ」

と思った。

成長の初期には、まず数をつくらなければならない。

住宅をつくる。

道路をつくる。

商業施設をつくる。

増えていく人口や需要に追いつくためには、スピードが重要になる。

しかし一定量が整えば、今度は、

長く使えるか。

壊れにくいか。

修理できるか。

快適か。

という「質」が問われ始める。

ここは、日本がかなり得意としてきた分野ではないだろうか。

品質管理。

保守点検。

現場改善。

修繕。

日本国内にいると当たり前すぎて、価値に気づきにくい。

しかし、急成長する国へ行けば、

日本では普通だと思っている技術が、これから必要とされる技術になる可能性がある。

車を見ても、その国の戦略が分かる

街を走る車も面白かった。

トヨタ、ホンダ、日産、マツダなど、日本車もたくさん走っている。

しかし、それ以上に目についたのが、

プロドゥアとプロトン。

マレーシアの国民車ブランドである。

この2社で、直近の新車市場の約6割を占めるとされている。

興味深いのは、この2社が外国の技術を拒否して育ったわけではないことだ。

プロドゥアはダイハツやトヨタとの関係が深い。

プロトンには中国の吉利汽車が出資している。

つまり、

海外の技術や資本を取り込みながら、自国のブランドと雇用を育てている。

これはとても現実的な国家戦略だと思う。

「全部自国でやる」でもなく、

「全部外国から買う」でもない。

外の力を使いながら、自分たちの産業を育てる。

日本企業にとっても、完成品を輸出するだけではなく、部品、設備、品質管理、人材育成など、いろいろな関わり方が考えられる。

日本は「もうダメ」なのだろうか

最近、日本にいると、

「日本は成長しない」

「海外に負けている」

「日本にはもう何もない」

という話を耳にすることが多い。

確かに、日本には人口減少や人手不足など、大きな課題がある。

ただ今回マレーシアを歩いてみて、少し見方が変わった。

日本の弱点ばかりを見ていると、

日本が長年かけて積み上げてきた強みが見えなくなる。

品質。

耐久性。

保守。

改善。

きめ細かなサービス。

日本国内では当たり前になりすぎている。

しかし、それは世界でも当たり前なのだろうか。

おそらく、そうではない。

成長する国が、量を増やす段階から質を高める段階へ進めば、

日本の持つ技術や考え方が必要になる場面は増えると思う。

ただし、日本式を押しつけてはいけない

一方で、

「日本の技術は優れているのだから、そのまま海外へ持っていけばいい」

という話でもない。

マレーシアと日本では、

気候も違う。

所得水準も違う。

材料も違う。

働き方も違う。

生活習慣も違う。

日本の品質をそのまま持ち込めば、価格が高すぎたり、現地では使いにくかったりする。

必要なのは、

日本の強みを、現地に合わせて組み直すこと。

教えてあげるという姿勢ではなく、現地の人たちと一緒につくることだと思う。

そして、逆に日本がマレーシアから学べることもある。

それは、

スピード。

まず動く。

やってみる。

問題が出たら直す。

日本では品質を求めるあまり、検討に時間をかけすぎることがある。

マレーシアの成長を見ていると、

速さそのものが競争力になる

ことを改めて感じる。

違いの間に、新しい仕事が生まれる

日本の丁寧さ。

マレーシアのスピード。

この二つを組み合わせたら、面白いと思う。

日本が一方的に教えるのでもない。

マレーシアを安い労働力や市場として見るのでもない。

それぞれが持つ強みを出し合い、足りない部分を補う。

そこに、新しい仕事が生まれるのではないか。

今回、クアラルンプールでは成長する首都の規模を感じた。

ジョホールバルでは、国境を越えて人と物が動く都市の勢いを感じた。

そして13年間、この国の変化を見続けてきた旧友の話から、

成長する国が、次に何を必要とするのか

を考えることができた。

日本の中だけにいると、日本の弱点ばかりが目につくことがある。

でも、海外へ出てみると、

日本が積み重ねてきたものには、まだ十分に価値がある。

同時に、成長する国から日本が学ぶこともたくさんある。

成長するマレーシアと、成熟した日本。

どちらが上でも、どちらが下でもない。

違うからこそ、組み合わせられる。

そして、

その「違い」の間にこそ、新しい仕事が生まれる余地がある。

今回のマレーシア旅行で、私はそんなことを感じた。