AIを使って、自分の食と健康を自分で守る時代へ

最近、ひょんなことから、肉や魚だけでなく、バターやチーズなどの乳製品も含め、動物性のものを口にしない、そんな食生活を体験している。

もうかれこれ数日経つのだが、そこで困った問題がいくつか発生している。

一番は「出汁」である。

そもそも出汁というと、鰹節や煮干しなどの魚介類、あるいは鶏や豚などの肉類から取るものが多い。しかも比較的簡単に旨味が出る。

ところが、今はそれが使えない。

そうなると真っ先に思い浮かぶのが、昆布と干し椎茸である。

もちろん、それで出汁を取ることはできる。ただ、毎回本格的に取ろうとすると、さすがに手間がかかる。

そこで、もっと簡単に使える植物性の出汁はないものかと、スーパーや百貨店を回ってみた。

探していたのは難しいものではない。

昆布だけ。あるいは昆布と椎茸だけ。

それを粉末や顆粒にして、お湯に入れればすぐに使えるものが欲しかった。

ところが、これが意外とない。

「ビーガンの人たちは、いったいどうしているのだろう」と思った。

福岡にはビーガンはいないのか、と思ってしまうほどだった。

百貨店にも行ったし、中心街の食品専門店も見て回った。それでも、動物性原料を使わず、しかも余計なものをできるだけ加えていない出汁は、ほとんど見つからなかった。

そして、もう一つ困るのが添加物や加工原料である。

もともと市販の加工食品には、さまざまな添加物や加工原料が使われているものが少なくない。そこからさらに動物性由来のものまで外そうとすると、選択肢は一気に狭くなる。

私は加工食品診断士という資格を持ち、食品添加物についてはある程度勉強してきた。そのため、本音ではできるだけ避けたいと思っているが、動物性由来のものまで外すとなると、ある程度は許容しなければ、食べられるものそのものがかなり限られてしまいそうだと感じた。

「昆布だし」「野菜だし」「椎茸だし」と書かれた商品はたくさんある。

しかし、裏の原材料表示を見ると、いろいろなものが入っている。

その中でも特に目についたのが「酵母エキス」だった。

ほかにも「たん白加水分解物」「でん粉分解物」などが使われている商品もあった。

表示を見ながら、

「酵母エキスは、そもそも食品添加物ではなかったよな」

「では、どうやって作っているのだろう」

と疑問を持った。

調べてみると、酵母エキスは酵母を培養し、その中にある成分を分解・抽出し、濃縮するなどして作られる。

たん白加水分解物も、大豆などのたんぱく質を酸や酵素によって分解して作られる。

ここで、さらに疑問が出てくる。

分解するときには何を使っているのだろう。

製造工程では、どんな物質が使われているのだろう。

途中で何か別の物質が生成することはないのだろうか。

ここまで来ると、原材料表示に書かれている言葉の意味を知るだけでは足りないことに気づく。

「何からできているのか」だけでなく、「どのように作られているのか」まで見なければ、本当のところは分からない。

例えば、同じように食品原料として表示されていても、素材を乾燥して粉末にしたものと、分解や抽出、濃縮といった工程を経て作られたものとでは、私たちが受ける印象はかなり違う。

もちろん、加工しているから悪いという話ではない。

ただ、自分が何を口にしているのかを知りたいと思ったとき、原材料名だけでは見えない部分があるということだ。

実際、食品の製造では、原材料表示だけを見ても、その食品が作られるまでの工程すべてが分かるわけではない。製造工程で使われたものでも、一定の条件では最終商品の表示に現れないものがある。また、食品を加工する過程で、意図せず別の物質が生成する場合もある。

だからといって、

「加工食品は危険だ」

「食品添加物はすべて悪い」

と言いたいわけではない。

法律上認められ、安全性が確認された範囲で使われているものもたくさんある。

多くの日本人は、食品メーカーに対してあまり疑う目を持たず、むしろ信頼して商品を購入しているように感じる。

それ自体は、決して悪いことではない。

メーカーへの信頼があるからこそ、私たちは毎日の買い物を安心してできる。

ただ、信頼することと、何も確認しないことは別だと思う。

最終的にその商品を選び、購入し、自分の体の中に入れるのは自分自身である。

原材料は商品の裏側にきちんと書かれている。少なくとも、そこに書かれている情報には一度目を通してから選ぶ習慣を持ってもよいのではないだろうか。

とはいえ、原材料表示を見ても、何が書いてあるのか分からないという人も多いと思う。

「酵母エキスって何?」

「たん白加水分解物って何?」

「加工でん粉って、普通のでん粉と何が違うの?」

私のように食品について多少勉強した経験があれば、そこで疑問を持つことができる。

しかし、一般の人にとっては、聞いたことのない言葉が並んでいても、それが何なのか分からないのが普通だと思う。

誰かに聞けば、「そんなことも知らないの?」と思われそうで聞きにくい人もいるかもしれない。

そもそも、身近に詳しい人がいないことの方が多いだろう。

だからといって、買い物のたびに本を開いたり、何ページものWebサイトを読み比べたりする人も、よほど関心がなければ少ないと思う。

しかし、今はAIがある。

分からなければ、その場でスマートフォンに話しかければいい。

文字を打つ必要すらない。原材料表示を見ながら音声で聞いてもいいし、写真を撮って、気になるものをまとめて聞いてもいい。

実際、今回の私もそうだった。

食品の裏側を見ながら、気になったことをAIに聞いた。

一つ答えが返ってくると、そこからさらに、

「これはどうやって作るの?」

「その工程では何か薬品は使うの?」

「それって何か問題はないの?」

「海外ではどう扱われているの?」

と、会話を重ねながら疑問を掘り下げていった。

さらに、

「この原材料表示だけでは分からないことは何?」

と聞いてみてもいい。

ここが、AIの面白いところだと思う。

これまでは、「何が分からないのか」さえ分からないことが多かった。

しかしAIと会話をすると、一つの疑問から次の疑問が生まれ、少しずつ食品の背景まで見えてくる。

もちろん、AIの回答がすべて正しいとは限らない。

メーカーによって製造方法が違えば、AIにも分からないことはある。健康に大きく関わることや、判断に迷う重要なことについては、行政やメーカーなどの一次情報まで確認した方がいい。

それでも、以前とは大きく違う。

これまでは専門知識を持っている人しか調べにくかったことを、普通の消費者でも、その場でかなり深く調べられるようになった。

AIの登場によって、専門家と一般の消費者との間にあった情報格差は、かなり小さくなる可能性があると思う。

AIに自分の健康を決めてもらうのではない。

「これは食べても大丈夫ですか?」と、判断を丸投げするのでもない。

AIを使って情報を集め、最後は自分で判断する。

食べるのか。

食べないのか。

どこまで加工された食品を受け入れるのか。

その基準は、人によって違っていい。

大切なのは、自分の体に何を入れるのかを、他人任せにしないことだ。

「無添加」と書いてあるから安心。

「国が認めているから安心」

逆に、聞いたことのない名前だから危険。

そんな単純な話ではない。

メーカーを信頼することも、国の基準や表示制度を信頼することも大切である。

そのうえで、自分で確かめ、自分が何を大切にするのかを考え、納得して選ぶ。

これからは、そんなことが誰にでもできる時代になっていくのではないだろうか。

ちなみに、この食生活をしてみて、もう一つ気づいたことがある。

肉や魚、乳製品を外してみると、私の場合はどうしても米や小麦などの炭水化物に寄りやすかった。野菜や果物にも糖質は含まれているため、結果として糖質の比率が高くなりやすいと感じた。

お菓子もそうだ。

実際に、じゃがいも、植物油、塩だけで作られたポテトチップスを見つけたときには、思わず買いそうになった。

原材料がシンプルで無添加に近い商品であれば、まだ選びやすい。しかし、ポテトチップスや焼き菓子、チョコレートなど、多くのお菓子は糖質や脂質を多く含むものが少なくない。しかも、保存性や食感、風味などを整えるために、さまざまな添加物が使われている商品も少なくない。

そのため、糖質を控えたい人や、健康上の理由などから糖質を抑える必要がある人には、必ずしも向いている食事方法ではないのかもしれない。

これも、実際にやってみなければ気づかなかったことの一つである。

正直なところ、今の自分にはあまり向いていない食事方法かもしれないとも思った。

ただ、最近少し太り気味だったこともあり、普段とは違う食生活を数日間取り入れたこと自体は、よいアクセントになったように感じている。実際、体重も少し減ったようだ。

自分の食と健康は、自分で守る。

これが、これからの時代に最も大切な考え方ではないだろうか。

ただし、子どもは自分だけで食べるものを選ぶことができない。

だからこそ、母親をはじめ、子どもを育てる立場にある大人が、食品や健康について一定の知識を持つことも大切だと思う。

自分で判断できる大人は、自分の食と健康を自分で守る。

そして、自分で判断できない子どもの食と健康は、育てる大人が守る。

AIは、そのために必要な知識を得る強力な手助けになるはずだ。