計画通りにいかない。だから計画が必要なのだ――『犯罪者』を観て考えた経営の話

Amazon Prime Videoで配信されているドラマ『犯罪者』を観た。

これが、むちゃくちゃ面白かった。

全7話だったので、結局ほとんど一気に観てしまった。

ストーリーそのものも面白いのだが、観終わってから、

「なぜ、こんなに面白かったんだろう」

と考えてみた。

一つは、話の展開の速さだと思う。

最初は、それぞれまったく別の出来事に見える。

人物も違う。
事件も違う。
いったいこれが何につながるのか、最初はよく分からない。

だから、ちゃんと観ていないと置いていかれる。

ところが話が進むにつれて、バラバラだった点が少しずつ線になり、最後には一つの大きな構図につながっていく。

「あの話は、ここにつながっていたのか」

という面白さがある。

でも、私が一番面白いと感じたのは、そこではない。

このドラマには、妙な現実味がある。

計画は立てる。でも、その通りにはいかない

ドラマの中では、登場人物たちがいろいろな計画を立てる。

ところが、実行している最中に、次々と新しい情報が入ってくる。

しかも、その情報は、それまでよりも精度が高い。

「自分たちが想定していた状況とは違う」

ということが、だんだん分かってくるのである。

本来なら、そこで一度立ち止まって計画を作り直したい。

しかし、もう計画は動き始めている。

ゆっくり練り直している時間はない。

だから、最初に立てた計画を実行しながら、その場その場で判断していく。

当然、すべてがうまくいくわけではない。

うまくいく部分もあれば、想定通りにいかない部分もある。

それでも、最悪の事態だけは何とか食い止める。

100点の成功ではなくても、絶対に守るべきものは守る。

ここが、とても現実的だった。

映画やドラマでは、主人公が完璧な計画を立て、最後にはすべて計算通りだった、という展開も多い。

もちろん、それはそれで爽快である。

しかし現実は、そんなにうまくはいかない。

むしろ、

計画通りにいかないのが現実だ。

そして、これは経営もまったく同じではないかと思った。

1年目の経営計画が、その通りになる方がおかしい

私は仕事柄、企業の経営計画を作る機会が多い。

売上をいくらにするのか。
利益をいくら出すのか。
何人採用するのか。
設備投資をいつ行うのか。

さまざまな数字を決めていく。

もちろん、計画通りに達成できれば一番いい。

しかし、特に最初に作った計画など、まずその通りにはならない。

実際に事業を動かしてみると、計画を立てた時点では見えていなかったことが次々に分かってくる。

経営には、自分ではコントロールできないことも多く、前提そのものが変わることさえある。

だから私は、むしろ最初から何年も先まで寸分違わず達成するような計画を見ると、

「少し安全に作りすぎているのではないか」

と思うことさえある。

では、計画通りにならないのであれば、計画を作る意味はないのだろうか。

逆である。

計画通りにいかないからこそ、計画が必要なのだ。

計画は未来を当てるためのものではない

「どうせ計画通りにはいかないのだから、経営計画なんて作っても意味がない」

という人がいる。

私はそうは思わない。

経営計画は、未来を予言するために作るものではない。

経営を管理するために作るものだ。

例えば、

「今年は売上1億円を目指す」

という計画を立てたとする。

結果は8,000万円だった。

計画を作っていなければ、

「今年も何とか終わった」

で済んでしまうかもしれない。

しかし1億円という計画があれば、

「なぜ2,000万円届かなかったのか」

という問いが生まれる。

客数が足りなかったのか。
客単価が低かったのか。
リピート率が悪かったのか。
営業件数が少なかったのか。
成約率が悪かったのか。
商品そのものに問題があったのか。

ここを分析する。

そして、

何が問題だったのか。
次は何を変えるのか。

を考える。

これが経営管理だと思う。

つまり、

計画 → 実績 → 差異 → 原因分析 → 改善

この繰り返しが重要なのである。

起きている問題と、本当の問題は違う

『犯罪者』を観ていて、もう一つ面白いと思ったところがある。

最初は、いろいろな出来事がバラバラに見える。

ところが調べていくと、それぞれの出来事の裏側にあるものが少しずつ見えてくる。

会社経営にも似たところがある。

例えば、

売上が落ちている。

社員が辞める。

残業が増えている。

利益が出ない。

社長が忙しすぎる。

表面的には、全部違う問題に見える。

しかし、本当にそうだろうか。

営業の仕組みがないから社長が営業する。

社長が営業で忙しいから、社員教育ができない。

社員が育たないから、仕事を任せられない。

仕事を任せられないから、さらに社長が忙しくなる。

そして社員も、

「この会社では成長できない」

と辞めていく。

こう考えると、

売上の問題。
人材の問題。
残業の問題。
社長の時間の問題。

すべてが、一つの根っこから生まれている可能性がある。

だから、目の前に起きている問題だけを処理していても、会社は良くならない。

現象ではなく、本質的な問題を見つけなければならない。

これも『犯罪者』の面白さと、どこか重なる。

経営では、実行中にも前提が変わる

ここで重要なのは、計画の前提が崩れたときに、何を基準に判断するかである。

すでに事業は動いている。十分な時間をかけて一から計画を作り直せるとは限らない。

そんなとき、最初の計画に固執するのではなく、走りながら判断しなければならない。

その判断の基準になるのは、計画そのものではない。

経営理念や経営戦略である。

自分たちは何のためにこの事業をしているのか。

どの顧客に、どんな価値を提供する会社なのか。

何を大切にし、何だけは譲らないのか。

そうした上位の考え方があるからこそ、計画の前提が崩れたときにも判断できる。

何を諦めるのか。

何を守るのか。

どこまでなら引けるのか。

そして、

何だけは絶対にやり遂げるのか。

を判断することだと思う。

『犯罪者』の登場人物たちも、すべてに成功しているわけではない。

かなり緻密な計画を立てても、新しい事実が分かれば、その前提は変わってしまう。

しかも、そのたびに一から計画を立て直す余裕はない。

それでも目的を見失わず、その瞬間にできる最善を選び続ける。

私は、これも経営に非常によく似ていると思う。

計画から「仕組み」が生まれる

計画を立てる。

実行する。

数字を見る。

なぜ達成できなかったのかを考える。

改善する。

また実行する。

これを何度も繰り返していく。

最初のうちは、計画と実績が大きくズレることも多い。

しかし、そのズレを毎回分析し、改善を続けていくと、少しずつ「どのくらい動けば、どのくらいの結果が出るのか」が見えてくる。

すると、最初は当てずっぽうに近かった数字が、だんだん現実に近づいてくる。

売上も利益も、以前より読めるようになる。

そして最終的には、計画に沿った売上や利益を継続的に生み出せる状態に近づいていく。

すると次第に、

「この営業件数なら、この程度の売上になる」

「この数字が落ち始めたら、ここを確認する」

「この原価率を超えると利益が出なくなる」

「この時期までに採用しないと繁忙期に間に合わない」

といったことが分かってくる。

それを経営者だけの経験や勘にしてしまわず、社員でも分かるようにする。

数字にする。
ルールにする。
手順にする。

そうすることで、初めて会社は、

継続的に売上や利益を生み出せる仕組み

を持つようになる。

だから私にとって経営計画とは、単なる数字の表ではない。

会社に仕組みを作るための土台なのである。

計画通りにいかない。だから面白い

『犯罪者』が面白かった理由を考えていたら、いつの間にか経営の話になってしまった。

でも、意外と共通しているのかもしれない。

計画を立てる。

実行する。

すると、新しい情報が入ってくる。

当初の想定が違っていたことが分かる。

しかし、もう走り始めている。

そこで立ち止まるのではなく、その状況で何を守るのかを決める。

計画そのものに固執するのではなく、目的を達成するために判断を変えていく。

だから、

計画通りにいかなかったことが失敗なのではない。

むしろ、計画と現実の違いを把握できないことの方が怖い。

計画とは、未来を当てるためのものではない。

現実とのズレを知るための基準である。

そして、そのズレが起きたときに、何を守り、何を変えるのかを決める基準になるのが、経営理念や経営戦略なのだと思う。

計画によって現実とのズレを把握する。

理念や戦略に照らして次の一手を決める。

その判断を後から検証し、改善を積み重ねていくことで、会社に少しずつ仕組みができていく。

そう考えると、

計画通りにいかないからこそ、計画が必要なのだ。

『犯罪者』を観ながら、そんなことを考えた。