良いご縁を生む「小さな貢献」の力
人が人生や仕事を前に進めるために必要なものは何か。
そう考えたとき、私は大きく3つの自己資源があると思っている。
それは、お金、経験・実績・技術力、そして人脈である。
お金があれば、学びに投資できる。
足りない部分を外部にお願いすることもできる。
時間を買うこともできるし、より良い環境に身を置くこともできる。
だからお金は、人生や経営において間違いなく大切な資源だ。
経験や実績、技術力も同じである。
これは言い換えれば「再現性のある力」だと思う。
一度だけうまくいったのではなく、もう一度やっても成果を出せる。
人より少し深く知っている。
人より少し上手くできる。
資格も含めて、そうした蓄積は確かな武器になる。
そして人脈。
これは単なる知り合いの数ではない。
自分では見えない情報を運んできてくれる人。
自分の可能性を信じてくれる人。
必要な時に誰かをつないでくれる人。
ときに、自分の人生そのものを変えるような出会いをもたらしてくれるものだ。
この3つは、どれも大切である。
どれか一つだけあればよい、というものではない。
お金があっても技術がなければ続かないことがある。
技術があっても人脈がなければ広がらないことがある。
人脈があっても中身がなければ信頼されないことがある。
だから本来は、3つとも少しずつ育てていく必要があるのだと思う。
ただ、いろいろ考えていくと、やはり最後に人を大きく飛躍させるのは、人との出会いなのではないかと思う。
どれだけお金を持っていても、必要な人と出会えなければ、そこで頭打ちになることがある。
どれだけ技術や実績があっても、世の中に知られなければ埋もれてしまうことがある。
逆に、たった一人との出会いで仕事の流れが変わることもある。
考え方が変わることもある。
見える景色が変わることもある。
振り返ってみれば、自分の人生の転機というのは、何かの本を読んだこと以上に、誰かと出会ったことが大きかった、という人も多いのではないだろうか。
厳しいことを言ってくれた人。
応援してくれた人。
仕事を任せてくれた人。
自分の価値を見つけてくれた人。
そういう出会いが、人を一段上に引き上げてくれることがある。
だから私は、結局のところ出会いがすべてなのだと思っている。
もちろん、これは運任せという意味ではない。
ただ待っていれば良い出会いが勝手にやってくる、という話でもない。
本当に大事なのは、どうすれば良いご縁が生まれるのかということだ。
そこで私は、やはり鍵になるのは貢献だと思う。
ただし、ここでいう貢献を難しく考える必要はない。
むしろ、日本では「貢献」という言葉を少し重く考えすぎているようにも思う。
貢献と聞くと、多くの人はこんなことを思い浮かべる。
寄付をする。
誰かにおごる。
ボランティア活動をする。
大きな社会活動をする。
地域のために身を削って働く。
もちろん、どれも立派なことだ。
できる人はすればいいし、否定するものではまったくない。
でも、貢献とは本来、もっと身近で、もっと日常的なものではないだろうか。
たとえば、笑顔で人の話を聞く。
相手が話しやすいようにうなずく。
忙しそうな人に「大丈夫ですか」と一言かける。
道を譲る。
ドアを押さえて待つ。
店員さんに気持ちよく「ありがとう」と伝える。
相手が少しでも安心できるように空気をやわらげる。
こういうことも、立派な貢献だと思う。
なぜなら、貢献とは、
誰かが1秒前より少し気分がよくなること
だからである。
私はこの感覚がとても大事だと思っている。
貢献を「立派な人がする大きなこと」と考えてしまうと、多くの人は自分には関係ないと思ってしまう。
お金がないから無理。
時間がないから無理。
余裕がないから無理。
そうやって、貢献が遠いものになってしまう。
でも、もし貢献が「相手の状態を少し良くすること」だとしたらどうだろうか。
それなら、誰でも、今日からできる。
いや、今この瞬間からでもできる。
ここがすごく大きいと思う。
しかも、人生や仕事を本当に変えるのは、大きな貢献一発よりも、こうした小さな貢献の積み重ねであることが多い。
人は、大きな親切を毎日受けることは少ない。
でも、小さな印象は確実に残る。
この人と話すとなんだか気分がいい。
この人はちゃんと目を見てくれる。
この人はこっちを急かさない。
この人は感じがいい。
この人は相手を雑に扱わない。
そういう印象は、静かに積み上がる。
そしてそれが、信頼になる。
信頼ができると、「また会いたい」「この人に頼みたい」「この人を紹介したい」につながる。
つまり、小さな貢献が、やがてご縁を生むのである。
だから人脈を作ろうと思うなら、名刺交換の数を増やすことよりも先に、
この人とまた会いたいと思ってもらえる自分であるか
を考えた方がいいのかもしれない。
ここで大切なのは、人脈というものを「取りに行くもの」と考えすぎないことだ。
人脈はたしかに作るものでもあるが、同時に生まれるものでもある。
そして、その多くは貢献の先に生まれる。
私は人生や仕事の王道は、こういう流れなのではないかと思っている。
思い → 行動 → 貢献 → ご縁 → 成功
最初にあるのは、お金ではない。
技術でもない。
人脈でもない。
最初にあるのは、たぶん思いだ。
こうありたい。
こういう人の役に立ちたい。
こういう社会にしたい。
これだけは見過ごせない。
自分はこんな人生を生きたい。
最初から立派な志を持っている人は少ないかもしれない。
でも、その前段階の「思い」は、多くの人の中にあるのではないだろうか。
そして、その思いが人を動かす。
思いがあるから行動できる。
行動するから、誰かに何らかの貢献ができる。
貢献するから、信頼が生まれる。
信頼が生まれるから、ご縁ができる。
そのご縁が、やがて大きな仕事や成功につながっていく。
逆に言えば、いきなり成功だけを追いかけると苦しくなる。
なぜなら、成功は結果であって、出発点ではないからだ。
出発点にあるべきなのは、やはり思いであり、その思いに基づく小さな行動なのだと思う。
私はここで、もう一つ大事なことがあると思っている。
それは、貢献はお金の使い方にも表れるということだ。
多くの人は、お金を使うことを消費だと考える。
もちろんそれも間違いではない。
でも実は、お金をどこに使うかには、その人の価値観が表れる。
応援したい会社の商品を買う。
共感する店に通う。
丁寧な仕事をしている人にお願いする。
社会にとって意味があると思う企業の株を買う。
こうした行動も、ある意味では立派な貢献だと思う。
なぜなら、それは「私はあなたを応援しています」という意思表示だからだ。
お金は単なる交換手段ではなく、応援の票でもある。
どこに払うか。
誰から買うか。
何を選ぶか。
そこには、その人の考え方がにじみ出る。
安いから買う。
便利だから使う。
もちろんそれも現実だ。
でも、その上で「誰を応援したいか」という視点を持てるようになると、お金の使い方そのものが貢献に変わる。
つまり貢献には、少なくとも二つの形があるのだと思う。
一つは、自分の態度や行動で相手を少し良くする貢献。
もう一つは、お金や選択を通じて相手や社会を支える貢献。
どちらも大切だ。
そしてどちらにも共通しているのは、意識が自分の外に向いていることである。
自分が得するかだけではない。
相手にとってどうか。
世の中にとってどうか。
未来にとってどうか。
そこに少しでも目が向いたとき、人の行動は単なる自己満足ではなく、貢献になっていくのだと思う。
結局、人はお金だけでは大成しない。
技術や資格だけでも大成しない。
最後にものを言うのは、やはり人との出会いである。
だが、その出会いは偶然だけで決まるものではない。
普段どんな態度で人に接しているか。
どんな思いで仕事をしているか。
どんな小さな貢献を積み重ねているか。
その在り方によって、引き寄せるご縁は変わってくる。
もし今、
お金がない。
実績もまだ少ない。
人脈もない。
そう感じている人がいたとしても、悲観する必要はない。
思いは持てる。
行動はできる。
小さな貢献は、今日からでも始められる。
笑顔で話を聞く。
目の前の人を少し気持ちよくする。
応援したいものを応援する。
誰かのために一歩動く。
その一つひとつは小さいかもしれない。
だが、人生を変えるのは、案外そういう小さなことの積み重ねだったりする。
大きな成功は、最初から大きな顔をしてやってくるわけではない。
多くの場合、それは小さな貢献の先に、静かに姿を現す。
だからこそ今日も、まずは目の前の人を
1秒前より少し良い気分にすること。
そこから始めればいいのではないだろうか。

髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役