福岡の経営コンサルタント|笑顔商店

福岡市の政策を見て、日本の未来を感じた話

先日、たまたま高島宗一郎の市長会見の記事を見ていた。
正直、最初は軽い気持ちだった。

ところが内容を見ているうちに、「福岡市、結構いいことをやっているな」と感じた。

特に印象に残ったのが、

「三世代同居・近居住み替え支援事業」

と、

「グローバルチャレンジ応援奨学金」

の2つである。

一見すると、まったく別の政策に見える。

しかし、よく見ると共通点がある。

それは、「人への投資」である。

しかも単なるお金の支援ではない。

人と人とのつながりや、
未来への循環を作ろうとしているように感じたのである。

日本の昔話に出てくるのは、なぜおじいさんとおばあさんなのか

「むかしむかし、あるところに……」

そう聞くと、多くの日本人は自然と、
「おじいさんとおばあさんがいました」
という言葉を思い浮かべるのではないだろうか。

考えてみると面白い。

日本の昔話には、お父さんやお母さんよりも、
おじいさんとおばあさんがよく出てくる。

私は、そこに日本の暮らしの歴史が表れているように感じる。

日本は長い間、農耕を中心とした社会だった。

食べていくだけでも大変な時代、
両親は一家の重要な働き手だったはずである。

夜明けから日が暮れるまで、田畑で働く。

場合によっては、家から離れた田畑に出ていたこともあっただろう。

そうなると、子どもを日常的に見ていたのは、
家の近くにいる祖父母だったのかもしれない。

祖父母は、家の周りの仕事をしながら、
孫を見守る。

昔話を聞かせる。

しつけをする。

季節の行事を教える。

食べ物のこと、自然のこと、地域のこと、神様やご先祖様のことを伝える。

そうやって日本では、
親の世代を一つ飛ばすようにして、
祖父母から孫へ、暮らしの知恵や文化が伝わってきたのではないかと思う。

親と子は近い。

近いからこそ、愛情も深い。

しかし近すぎるからこそ、ぶつかることもある。

一方で、祖父母と孫の関係には、少し距離がある。

責任はあるが、親ほど力みすぎない。

期待はあるが、親ほど感情的になりすぎない。

その距離感が、子どもにとっては安心になることがある。

私自身も、祖父母に育てられた感覚が強い

実は私自身、忙しい親に育てられたというより、祖父母に育ててもらった感覚が強い。

祖父からはいろいろな話を聞かされた。

面倒もよく見てもらった。

それは私だけではなく、兄弟も同じだった。

今になって思うと、あの時間はとても大きかった。

親とは違う距離感で見てくれる大人がいた。

家の中に、親以外の価値観があった。

それは子どもにとって、とても安心できる環境だったのだと思う。

今の日本では、
「子育ては親がするもの」
という感覚が強い。

もちろん、それは間違いではない。

しかし、本来子どもは、もっと多くの大人に見守られながら育っていたのではないだろうか。

祖父母。

近所の人。

地域の大人たち。

いろいろな人との関わりの中で、子どもは育っていた。

しかし現代は、核家族化が進んだ。

大家族から核家族へ。

地域で育てる子育てから、親だけで抱える子育てへ。

その結果、保育園が必要になり、
子育ての負担は親に集中した。

もちろん、保育園は大切である。

しかし、保育園だけで子育てのすべてを支えるのは難しい。

親は忙しい。

共働きも増えた。

時間も余裕もない。

しかも親子は近すぎるゆえの難しさもある。

愛情が深いからこそ、感情的になってしまう。

期待してしまう。

悩んでしまう。

実際、今の親たちはとても苦しんでいるように見える。

考えてみれば、
今のように「親だけで子育てを抱える形」は、歴史的には比較的新しい。

まだ70年、100年にも満たないのかもしれない。

そう考えると、福岡市の三世代同居・近居支援事業は、とても面白い。

昔の日本にあった仕組みを、そのまま戻すのではない。

現代向けに、ちょうど良い距離感へ再設計している。

そこが実に今風だと思った。

毎日べったりの同居ではなく、
徒歩圏や車で10〜20分程度の「近居」。

困った時に助け合える。

子どもを少し見てもらえる。

親も安心できる。

しかし、適度な距離感は保てる。

これは単なる住宅政策ではない。

現代の日本人の家族関係を、かなり理解した上で作られている政策に感じた。

若者は、一度海外を見た方がいい

もう一つ面白いと思ったのが、
グローバルチャレンジ応援奨学金だった。

若者に海外留学を支援し、
その後、福岡市内の企業で3年間働けば返還免除になる。

これはかなり筋がいい。

私は昔から、
「若者は一度海外を見た方がいい」
と思っている。

別に、日本を否定するためではない。

むしろ逆だ。

海外を見ることで、日本の良さも見える。

同時に、日本の課題も見える。

外を知らなければ、比較ができない。

比較ができなければ、変化も起きにくい。

今の日本は、どうしても内向きになりやすい。

しかし、これからの時代は、
世界を知りながら、日本でどう生きるか
が重要になると思う。

福岡市は若者が多い街である。

大学も多く、学生も多い。

しかし一方で、卒業後に福岡を離れ、東京圏や他県へ出ていく若者も少なくない。

つまり福岡市にとっての課題は、若者を集めることだけではない。

「学びに来た若者に、卒業後も福岡で活躍してもらうこと」
なのである。

その意味で、この奨学金制度はとてもよく考えられている。

若者を海外へ送り出す。

しかし、送り出して終わりではない。

福岡市内の企業で3年間働けば返還免除になる。

つまり、

若者

海外経験

地元企業へ還元

地域経済の活性化

という循環を作ろうとしているのである。

企業側から見てもメリットは大きい。

今、多くの企業は人手不足である。

特に、

  ●視野が広い

  ●行動力がある

  ●海外経験がある

  ●新しい価値観を持つ

若者は欲しい。

これは単なる教育政策ではない。

「都市の未来づくり」
そのものだと思った。

福岡市は「人」に投資している

最近、私はよく思う。

これからの時代、本当に重要なのは、
建物でも、
箱物でも、
補助金そのものでもなく、
「人」
なのではないかと。

もちろんインフラも必要である。

しかし、どんなに立派な建物があっても、
そこに未来を作る人がいなければ意味がない。

逆に、人が集まり、
希望があり、
挑戦できる空気がある場所には、
自然と企業も集まる。

福岡市は、そこを理解しているように感じた。

三世代近居政策では、
家族や地域のつながりを再設計しようとしている。

グローバル奨学金では、
若者と世界、そして地域企業をつなげようとしている。

どちらも共通しているのは、
「人間の孤立を減らそうとしている」
ことだと思う。

今の日本は便利になった。

しかし、その一方で、
孤独も増えた。

子育ての孤立。

高齢者の孤立。

若者の孤立。

地域の分断。

だからこそ、
これから必要なのは、
単なる効率化ではなく、
「つながりの再設計」
なのかもしれない。

革新とは、昔の良い仕組みを現代に合わせて作り直すこと

私は、革新とは、何もすべてをゼロから作り出すことではないと思っている。

むしろ、昔からあった良い仕組みを、現代に合わせて作り直すことも、大切な革新である。

今回の福岡市の政策を見て、まさにそれを感じた。

祖父母が孫を支える。

若者が外を見て、地元へ戻る。

昔の日本には、確かにそういう循環があった。

しかし現代は、価値観も違う。

働き方も違う。

家族の距離感も違う。

だから、そのまま昔に戻るのではなく、
「近居」や「返還免除型奨学金」という形で、現代向けに再設計している。

これは、とても面白い。

そして私は、こういう政策を見ると、
「日本もまだ捨てたものではないな」
と思うのである。

未来は、悲観ばかりではない。

ちゃんと考えている人もいる。

ちゃんと次の時代を作ろうとしている人もいる。

そして何より、
子どもや若者に希望を持たせようとしている。

それが、私はとても良いことだと思った。

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髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役