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期待と懸念の「ジャングリア沖縄」体験記〜最高のスパと、惜しすぎる運営のリアル〜

2025年7月にオープンして以来、沖縄の新しい目玉として、また日経トレンディの「2025年ヒット商品」にも選ばれるなど、良くも悪くも様々な噂が絶えないテーマパーク、「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」。

沖縄本島北部の世界自然遺産「やんばる」の森に抱かれた、その新感覚のパークへ、ついに私も足を運ぶことができました。

奇跡的に恵まれた天気、最高の沖縄

訪問の3日前、天気予報は絶望的な「降水確率70%」。雨のテーマパークほど憂鬱なものはありません。しかし、日頃の行いが良かったのか、当日は予報を裏切る奇跡的な天候に。

雨は一滴も降らず、かといって南国特有のカンカン照りでもない、「曇り時々晴れ」という、まさにパーク日和。この時期(11月)の沖縄は、気温も湿度も快適そのもの。暑すぎず寒すぎず、1年の中でも最も観光におすすめの時期かもしれません。

滞在していたホテルからは車で約40分。期待に胸を膨らませ、やんばるの森へと車を走らせました。

「Power Vacance!!(パワー・バカンス)」をコンセプトに掲げ、「超興奮」と「贅沢な癒し」を両立させるというジャングリア。その実力は、果たして。

圧巻。すべてを肯定する「スパ・ジャングリア」の絶景

結論から先に言います。 今回の訪問で「これだけでも来てよかった」と心から思えた瞬間がありました。それは、パーク本体ではなく、独立した施設である「スパ・ジャングリア」での体験です。

やんばるの森を見下ろす、唯一無二のパワー

このスパの最大の魅力は、そのロケーション。 露天風呂のインフィニティ・バスに浸かると、視界いっぱいに広がるのは、世界自然遺産やんばるの雄大な山々。遮るものは何もなく、ただただ深い緑と青い空が広がっています。

この絶景は、筆舌に尽くしがたい。

日々の喧騒、仕事の疲れ、パークの混雑、何もかもがどうでも良くなるような、圧倒的なパワーと癒しを同時に感じます。まさに「贅沢な癒し」というコンセプトの一翼を、このスパが全力で担っていると感じました。

10個あるというお風呂も多彩で、サウナや水風呂もしっかり完備。何時間でもいられそうな空間です。正直、私はこの景色を見るためだけに、もう一度ここを訪れても良いとさえ思いました。

パーク本体の現実。「超興奮」への長い道のり

さて、最高のスパ体験で期待値が最高潮に達したところで、いよいよパーク本体、「ジャングリア」エリアの体験です。

アトラクションの混雑状況:運とタイミングがすべて?

我々は、訪問前から「絶対にこれに乗りたい」と強く決めていたわけではなく、その場の流れで楽しもうと考えていました。

パークに入ったのはまだ午前中と言える時間帯。まずは人気アトラクションの状況を見て回ることに。 すると、やはり人気のスリル系は厳しい状況でした。「バンジー グライダー」「ヒューマン アロー」「タイタンズ スウィング」といった絶叫系は、残念ながら早々に受付終了。看板アトラクションの人気の高さが伺えます。

他のアトラクションに目を向けると、「バギー ボルテージ」(バギー走行)や「ファインディング ダイナソーズ」(恐竜探し)などは「60分待ち」の表示。

これは人気テーマパークの宿命であり、ある程度は仕方のないことです。

半ば諦めかけたその時、なんと、もう一つの目玉である「ダイナソー サファリ」が「10分待ち」という奇跡的な表示! これは運が良いとしか言いようがありません。我々は迷わず列に並び、ほとんど待つことなくジュラシックな体験を楽しむことができました。

とはいえ、やはり全体としてパークの敷地面積に対して、アトラクションの「数」そのものが、ディズニーやUSJといったメガパークに比べて少ない印象は否めません。 結果として、限られたアトラクションに人気が集中し、我々のように運良く乗れるケースもある一方で、タイミングを逃すと「受付終了」や「長時間待ち」になってしまう状況が生まれているように感じました。

惜しい、あまりにも惜しい。気になった数々の「運営の穴」

最高のロケーションと「スパ」という強力な武器を持ちながら、今回の訪問で私が最も強く感じたのは、「あまりにもったいない」という複雑な感情でした。

「Power Vacance!!」という素晴らしいコンセプトが、現場のオペレーションや施設設計の段階で、いくつか綻びを見せているように思えたのです。

致命的すぎる「スパ」と「パーク」の断絶

私が最高と評した「スパ・ジャングリア」。 実はこれ、パーク本体(ジャングリア)とは入口が全く別なのです。

もちろん、これは「パークのアトラクションには興味ないけれど、あの絶景スパだけ楽しみたい」という人にとっては、パークの高い入場料を払わずにスパ単体で利用できるという大きなメリットとも言えます。

しかし、その一方で、「パークで遊んで汗をかいたから、最後にスパで汗を流して帰ろう」という、テーマパーク利用者として最も自然な動線を、施設側が自ら断ち切ってしまっている形にもなっています。

「興奮」と「癒し」の両立を謳いながら、その「興奮」と「癒し」の間には、物理的・心理的な壁が立ちはだかっているのです。

私がそう強く感じさせられたのには、理由があります。 パーク内で貰う地図には、ジャングリアのエリアとスパ・ジャングリアが一緒に載っているのです。これを見ると、誰もが「パークの中からそのまま行ける」「少なくとも隣接していて、すぐに行ける」と期待するのではないでしょうか。

実際、私もその一人でした。 地図を頼りに、「スパへはこちら」といった案内を探し、パークの敷地内や出口付近を何度も行ったり来たりしてしまったのです。しかし、どこにもそれらしき通路は見当たらない。

結局、係の方に確認したところ、「スパへは一度パークのゲートを出て、シャトルバスかご自身の車で移動する必要があります」と知らされました。 この「期待していたのに、一度出なければならない」というギャップこそが、最大の「壁」だと感じました。

さらに、その移動手段にも問題があります。 両エリア間を移動するシャトルバスは15分に1本程度の間隔で運行されているようですが、一度ゲートを出て、バスを待ち、移動するという「ひと手間」がかかります。

そして、より大きな問題は車での移動です。 「じゃあ自分の車で移動すればいい」となりますが、なんと車で移動すると、それぞれの駐車場で料金が発生し、駐車料金が実質倍になってしまいます。

これでは、コンセプトとして掲げる「興奮と癒しの両立」が、現場のオペレーションで非常に体験しづらくなっている。設計思想として、非常にもったいないと感じました。

「贅沢な癒し」に水を差す、細かな不備

最高の景色を誇るスパですが、ここにも「?」がありました。

「休憩所」がないのです。 正確には、湯上がりにゆっくりと横になったり、リクライニングチェアでくつろいだりできるような、本格的なリラクゼーションスペースが見当たりませんでした。 あれだけの絶景と泉質(温泉ではないかもしれませんが)があるのに、湯上がりの体を休める場所がない。10個ものお風呂を巡った後、利用者は行き場を失ってしまいます。

さらに、パーク全体に言えることですが、トイレが少ない。 テーマパークにおいて、トイレの数は快適性を左右する重要な要素です。これは早急な改善が望まれます。

最後に、これは些細な点かもしれませんが、お土産屋さんについてです。パークの出口付近には左右にお土産屋さんがありましたが、どちらも覗いてみたところ、品揃えがほとんど同じように感じられました。

少し辛口な分析:このビジネスモデルは持続可能か?

ここからは、一人の客として、そして少しビジネスの視点を持って感じた懸念点です。

❶ 「自然」を活かすアトラクションのジレンマ

ジャングリアのアトラクションは、やんばるの森という「自然」を最大限に活かしたものです。 「ツリートップ トレッキング」やバギーなど、これは都会のテーマパークでは絶対に味わえない、ジャングリア最大の強みです。子供たちの教育にも非常に良い体験だと思います。

しかし、この「自然」は、運営上の大きな制約にもなります。 まず、自然を相手にするアトラクションは、安全管理のために非常に多くの「人」(スタッフ)が必要です。 機械任せにできず、各ポイントに監視員やガイドを配置しなければならない。これは、他のテーマパークに比べて、運転資金、特に人件費が格段に高くなることを意味します。

さらに、日が暮れると危険なため、多くのアトラクションが営業できないという時間的な制約。 夜の「ジャングリア ナイト フェス」や花火があるとはいえ、日中の稼働時間が限られるのは、収益機会の損失に繋がります。

❷ 投資とコストのアンバランス

率直に言って、入場料は「高め」です。 しかし、この価格設定でも、採算が合っているかは非常に微妙だと感じました。

「ダイナソー サファリ」など一部を除き、アトラクションの多くは、巨大な建造物やハイテクなライドシステムといった莫大な「設備投資」を要するものではなく、既存の地形や自然を活用するものです。設備投資は(メガパークに比べれば)抑えられている印象です。

その一方で、前述の通り、運営に必要な「人」が非常に多い。 この「抑えられた設備投資」と「高い運転資金(人件費)」というアンバランスなコスト構造が、今後どう影響していくのか。

❸ ターゲットは誰なのか?

体験して感じたのは、「これは外国人観光客向けに最適化されているのではないか」ということです。 やんばるの大自然、スリル、そして日本ならではの丁寧な「おもてなし」(=人件費の高さ)を組み合わせた体験は、特に富裕層の外国人には魅力的に映るでしょう。

日本人のおもてなしによる、自然を活かした体験サービス。 それが、このパークのビジネスモデルの核なのかもしれません。

結論:ポテンシャルは最高、だが今は「スパ」が主役

今回、大きな期待を持って訪れた「ジャングリア沖縄」。 「Power Vacance!!」というコンセプトは素晴らしく、特に「スパ・ジャングリア」から望むやんばるの絶景は、間違いなく沖縄でトップクラスの体験でした。

しかし、その最高の「癒し」と、スリル満点であるはずの「興奮」を繋ぐ動線があまりにも弱く、施設の細かな不備や、ビジネスモデルとしての危うさが目についてしまったのも事実です。

2025年7月にオープンしたばかり。まだ運営が軌道に乗っていない部分も多いのでしょう。 日経トレンディのヒット商品にも選ばれ、期待値は非常に高いパークです。

これから、シャトルバスの増便や、スパの休憩所の設置、トイレの増設、そして何より「スパとパークの連携」といった課題がクリアされていくことを、一ファンとして心から期待しています。

現状の私からのお勧めは、「パーク本体はおまけ。やんばるの絶景スパに入りに行く」というマインドで訪れること。

そうすれば、最高の満足感が得られることは間違いありません。 あの絶景は、本当に一見の価値ありです。

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髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役