世の中には「成功者」と呼ばれる人が意外と多く存在します。
SNSを開けば、きらびやかな生活を誇示するインフルエンサー、若くして巨万の富を得た起業家、あるいは暗号資産で一夜にして億万長者になった人々が溢れています。彼らは確かに、その時点においては「成功者」であり、経済的な勝者に見えるでしょう。
しかし、その成功の輝きが10年、20年、あるいは生涯にわたって続くかというと、話は別です。 「成金」という言葉があるように、一時の運や勢いで成り上がったものの、数年後には跡形もなく消えてしまう。そんな儚い成功者が後を絶たないのが現実です。
一方で、時代を超えて繁栄し続け、経済的な富だけでなく、人々からの尊敬や信頼をも集め続ける「大成功者」が存在します。彼らは一過性のブームに流されることなく、まるで大木のように地に根を張り、永続的な豊かさを享受しています。
単なる「成功者」と、伝説となるような「大成功者」。 両者の間には、どのような違いがあるのでしょうか。才能でしょうか? 努力の量でしょうか? それとも、生まれ持った環境でしょうか?
多くの先人たち、そして私自身が見聞きしてきた結論は、もっとシンプルで、かつ奥深いものでした。
その決定的な差は、「運」です。 それも、ただ棚からぼた餅が落ちてくるのを待つような受動的な運ではなく、自らのあり方で手繰り寄せる「必然の運」なのです。
今回は、この「運」の正体と、それを高めるための古来からの叡智について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
❶ 松下幸之助が見抜いていた「運」の本質
経営の神様と呼ばれたパナソニック(旧松下電器)の創業者、松下幸之助翁には、有名な採用面接のエピソードがあります。
彼は、面接の最後に必ずこう尋ねたそうです。 「あなたは、自分を運が良い人間だと思いますか?」
学歴がどれほど高くても、能力がどれほど優れていても、「いいえ、私は運が悪いです」あるいは「普通です」と答えた人は、その時点で不採用にしたといいます。 逆に、「はい、私は非常に運が良いです」と即答した人だけを採用しました。
なぜでしょうか。 これは単なるオカルトやげん担ぎではありません。この質問に対する答えには、その人の人生に対する根本的なスタンス、もっと言えば「人間性」そのものが表れるからです。
「自分は運が良い」と言える人は、自分の力だけで生きているとは考えていません。 困難な状況にあっても、「あの時、あの人が助けてくれたから今の自分がある」「この失敗があったからこそ、新しい道が開けた」と、周囲への感謝や、逆境をプラスに転換する解釈力を持っています。つまり、謙虚さとポジティブさを兼ね備えているのです。
一方で、「自分は運が悪い」と考える人は、何かがうまくいかないとき、その原因を環境や他人のせいにしがちです。「景気が悪いから」「上司が悪いから」「親ガチャに外れたから」。不平不満を口にし、自分以外の何かに責任を転嫁する心からは、決して良い仕事も、良い人間関係も生まれません。
松下翁は、この「感謝の心」と「自責の念」を持てる人物かどうかを、「運が良いか」というたった一つの質問で見抜いていたのです。
大成功者と呼ばれる人々は、例外なくこの「自分は運が良い」という確信を持っています。 彼らは知っているのです。成功とは自分の能力だけで掴み取るものではなく、多くの他力(たりき)によって支えられ、押し上げられるものであることを。
❷ 運は「人」が運んでくる
では、その「運」はどうすれば良くなるのでしょうか。 神頼みをする? パワースポットに行く? もちろんそれも心の安寧には良いでしょう。 しかし、現実社会において最も確実に運気を上げる方法は、もっと具体的です。
それは、「人のために何かをする」ということです。
冷静に考えてみてください。 ビジネスのチャンスを持ってくるのは誰でしょうか? 困ったときに助け舟を出してくれるのは誰でしょうか? あなたの才能を見出し、引き上げてくれるのは誰でしょうか?
それはすべて「人」です。 運は空から降ってくるものではなく、人が運んでくるものなのです。
人に好かれる人、人が集まってくる人には、自然と情報もチャンスも集まります。 逆に、自分の利益ばかりを考え、他人を利用しようとする人の周りからは、潮が引くように人が去っていきます。人が去れば、当然、運も去っていきます。これが一過性の成功者が没落していくメカニズムです。
大成功者は、徹底した「ギバー(Giver:与える人)」です。 彼らは、自分が受け取るよりも先に、まず相手に何ができるかを考えます。 「どうすればこの人が喜ぶだろうか」 「どうすればこの人の役に立てるだろうか」 そうやって蒔いた種が、やがて芽を出し、予想もしないような大きな果実となって、自分のもとに(しばしば何倍にもなって)返ってくるのです。
これは投資の世界でも同じです。目先の利益を追うのではなく、長期的な信頼関係に投資できる人だけが、永続的なリターンを得ることができます。
❸ 「払いは祓い」──お金と運気の不思議な関係
ここで、非常に興味深い日本の言葉をご紹介しましょう。 「払(はら)いは、祓(はら)い」。
お金を「支払う」ことと、厄を「祓う」ことは、同じ「はらい」という音を持ち、深い部分で繋がっているという考え方です。これを聞いたとき、私は日本語の持つ言霊の力に戦慄すら覚えました。
「運が悪いな」「最近ツイていないな」と感じたとき、皆さんはどうしますか? じっと家に閉じこもって節約しますか? 実は、そんな時こそ「人におごる」「人のために金を使う」ことが、最強の開運アクションになると言われています。
なぜ、お金を使うことが厄除けになるのか。それにはいくつかの理由が考えられます。
① 執着を手放す修行
人間が抱える苦しみの多くは「執着」から生まれます。特にお金への執着は強力で、人の心を貧しく、狭くします。「減らしたくない」「損をしたくない」という恐怖心は、新しい気が入ってくるのをブロックしてしまいます。 誰かのために気持ちよくお金を払うことは、この「執着」という重い鎖を自ら断ち切る行為です。財布の紐を緩めることは、心の緊張を緩め、執着の垢を祓い落とす儀式なのです。
② 富の循環(フロー)を作る
お金は水のようなものです。留まれば腐りますが、流せば清らかさを保ち、やがて大海となって戻ってきます。 「人におごる」という行為は、自らポンプとなって水の流れを作る行為です。 誰かに食事をご馳走する。部下に差し入れをする。お世話になった人に贈り物を送る。 これらは単なる出費ではありません。喜びのエネルギーを社会に放つことであり、そのポジティブな波動は、巡り巡って必ず自分のもとに還流します。
③ 「徳」を積む
誰かの笑顔のために自分のお金や労力を使うことは、目に見えない貯金、いわゆる「陰徳」を積むことになります。 昔の人は、この「徳」こそが、いざという時に身を守り、子孫を繁栄させる真の財産だと知っていました。大成功者が多額の寄付をしたり、財団を作って社会貢献をするのは、単なる税金対策ではありません。彼らは直感的に、富を独占することの危うさと、分配することによるエネルギーの増幅を知っているのです。
❹ 誰も見ていないところでの「約束」
冒頭で触れた「成功者と大成功者の違い」について、もう一つ重要な視点を加えたいと思います。
それは、「お天道様が見ている」という感覚を持っているかどうかです。
一時の成功者は、人が見ているところでは善人を演じ、人が見ていないところでは手を抜いたり、不正を働いたりします。彼らの行動基準は「バレるかバレないか」「損か得か」です。
しかし、大成功者は違います。 彼らは、誰も見ていないところでも、自分自身との約束を守ります。 「誠」という字は「言ったことが成る」と書きますが、彼らは自分の発した言葉、自分の心に決めた信念に対して誠実であろうとします。
なぜなら、たとえ他人の目は誤魔化せても、自分自身と、そしてお天道様(あるいは自分の良心、サムシング・グレート)は誤魔化せないことを知っているからです。「払いは祓い」の実践も、見返りを求めていやいや行うのでは意味がありません。 「誰かが見ているからやる」のではなく、「自分の心がそうしたいからやる」。 「運を上げたいから」という下心からスタートしたとしても、最終的に「相手の喜ぶ顔が見たい」という純粋な気持ちに行き着いたとき、初めて本当の「祓い」が完了し、運命の歯車が大きく好転し始めるのです。
❺ 結論:今日からできる「大成功者」への第一歩
成功者と大成功者の違い。 それは、能力の差ではなく、「心のあり方」の差でした。
自分を「運が良い」と信じられる感謝の心。 運を運んでくれる「人」を大切にする利他の精神。 そして、執着を手放し、豊かさを循環させる「払いは祓い」の実践。
今の日本は、閉塞感が漂い、希望を持ちにくい社会だと言われることがあります。 しかし、だからこそ、こうした古来の叡智、日本人がかつて当たり前に持っていた「粋(いき)」な精神が、光を放つのではないでしょうか。
もし今、あなたが現状に行き詰まりを感じているなら、あるいはもっと大きな高みを目指したいと願うなら、小さなことから始めてみてください。
コンビニの募金箱に小銭を入れるだけでもいい。 同僚に缶コーヒーを一本ご馳走するだけでもいい。 家族に「ありがとう」の言葉という、形のない贈り物をすることでもいい。
「自分のため」という狭い殻を破り、「誰かのため」にエネルギーを使った瞬間、あなたはすでに「大成功者」への道を歩み始めています。
神様は、自分との約束を守り、周りの人を大切にしようと懸命に生きる人間を見捨てることはありません。 あなたが放った「善きもの」は、必ずあなたのもとに帰ってきます。 そう信じて、今日という日を、胸を張って、上機嫌に生きていこうではありませんか。
お天道様は、今日もあなたのその背中を、温かく見守ってくれています。
【読者の皆様へ:次のアクション】
この記事を読んで「何かを変えたい」と感じた方へ。まずは今週、「見返りを期待せずに、誰かに小さなおごり(食事やプレゼント、手助けなど)」を実践してみませんか? そして、その時の自分の心の変化(清々しさや相手の笑顔を見た喜び)を観察してみてください。それが、あなたの運気を変える第一歩です。

髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役