福岡の経営コンサルタント|笑顔商店

人生最高のウニ丼が教えてくれた、海の恵みと地球の未来

先日、北海道の余市を訪れた際に、生涯忘れられないであろう逸品に出会いました。それは、朝獲れの新鮮なウニがこれでもかと乗せられた、一杯の「ウニ丼」。

口に含んだ瞬間、まず驚いたのはそのクリーミーさ。舌の上でとろけるような滑らかな食感とともに、濃厚な旨味が口いっぱいに広がります。そして、後から追いかけてくる、雑味のない澄んだ甘さ。磯の香りがふわりと鼻を抜け、思わず目を閉じてしまうほどの幸福感でした。まさに、人生で最高のウニ丼。この感動は、しばらく私の頭から離れませんでした。

「ウニの旬」は夏だけじゃなかった?驚きのウニリレー

「それにしても、最高のタイミングで来られたな」。そんな余韻に浸りながら、ふと疑問が湧きました。ウニは夏が旬だとばかり思っていましたが、本当にそうなのでしょうか。美味しいウニには、漁獲が許可されている「旬」の時期があると聞いたことはあります。しかし、先日訪れた寿司屋でも、その前の旅行先でも、ウニはいつも高値安定の人気者。一体、ウニの旬とはどうなっているのでしょうか。

この素朴な疑問から少し調べてみて、私は大きな勘違いをしていたことに気づかされました。なんと、美食の宝庫・北海道では、地域ごとにウニ漁の解禁時期が異なり、ほぼ一年中、どこかで旬のウニが水揚げされていたのです。

北海道の地域別ウニ漁期(一例)

・羅臼(らうす): 1月〜6月

・襟裳(えりも)・日高(ひだか): 3月下旬〜5月

・礼文島(れぶんとう)・雄武(おうむ): 4月〜6月

・積丹(しゃこたん)・小樽(おたる)・利尻島(りしりとう): 6月〜8月

・松前(まつまえ)など道南: 9月末〜12月、11月〜5月

まさに「ウニリレー」。私が訪れた夏の余市(積丹半島エリア)は、濃厚な甘みが特徴の「エゾバフンウニ」や、上品な味わいの「キタムラサキウニ」が最盛期を迎える、まさにベストシーズンだったのです。

この「旬のずれ」は北海道に限りません。本州の青森では春から初夏、三陸では夏、九州では春や秋と、日本全国でウニの旬は異なります。

では、なぜこんなにも産地によって旬が違うのでしょうか。その理由は、ウニの生態に深く関わっていました。

[1] 産卵期の違い: ウニが最も美味しくなるのは、産卵を控えて栄養をたっぷり蓄えた「産卵の1〜2ヶ月前」。この産卵期が、地域や種類によって異なるため、旬もずれるのです。

[2] 海水温の違い: ウニの成長や産卵は海水温に大きく影響されます。暖かい九州と、冷涼な北海道では、当然そのタイミングも変わってきます。

[3] エサとなる海藻の違い: ウニの味は、何を食べて育ったかで決まります。特に、利尻昆布や羅臼昆布のような上質な昆布を食べるウニは、極上の味になると言われています。地域ごとの海藻の生育サイクルも、ウニの旬に関係しているのです。

この絶妙な自然のサイクルのおかげで、私たちは一年を通して美味しいウニを味わうことができていたのでした。

忍び寄る危機、ウニが食べられなくなる日

しかし、最近の寿司屋のメニューを見て、胸を痛めている方も多いのではないでしょうか。どこに行っても「時価」の札が貼られ、一貫あたりの値段は高騰を続けています。この価格高騰の背景には、単なる人気だけでなく、もっと根深く、そして深刻な問題が隠されていました。それは「地球温暖化による海水温の上昇」です。

私たち人間が感じる気温1℃の変化は、さほど大きなものに感じないかもしれません。しかし、変温動物である魚やウニにとって、水温が1℃上がることは、人間が感じる気温の変化に換算すると約5〜10℃も上がるのに相当すると言われています。それは、彼らの生態系を根底から揺るがす、まさに死活問題なのです。

海水温の上昇は、ウニに以下のような深刻な影響を及ぼします。

・生息域の北上・縮小: 冷たい海を好むウニは、海水温が上がると、より北の涼しい海域へと移動を余儀なくされます。従来の産地ではウニが獲れなくなる可能性があります。

・産卵期の変動: 水温の変化で産卵のタイミングが狂い、繁殖がうまくいかなくなります。これは、資源の減少に直結します。

・エサの減少(磯焼け): 海水温の上昇は、ウニのエサである海藻の生育環境も悪化させます。海藻が枯れてしまう「磯焼け」が広がると、ウニは栄養を蓄えられず、身入りが悪くなったり、味が落ちたりしてしまいます。

近年、北海道の一部地域でウニの漁獲量が激減しているというニュースは、まさにこの問題が現実となっている証拠です。あの余市で食べた感動の味も、いつか幻になってしまうかもしれない。そう考えると、背筋が寒くなる思いでした。

未来のウニは「天然」か「養殖」か

この危機的状況の中、注目されているのが「養殖ウニ」です。将来、私たちの食卓にのぼるウニは、天然ものと養殖ものとで、その役割が大きく変わってくるかもしれません。

・天然ウニ: 自然環境の変動をダイレクトに受けるため、海水温の上昇は漁獲量の不安定化や減少に直結します。旬の時期が短くなったり、味が落ちたりするリスクも高まります。

・養殖ウニ: 陸上施設などで水温やエサを管理できるため、気候変動の影響を受けにくく、安定的な供給が可能です。旬の時期をコントロールし、年間を通して高品質なウニを育てる研究も進んでいます。

もちろん、その土地の海で、自然の昆布を食べて育った天然ウニの味わいは何物にも代えがたいものです。しかし、この海の恵みを未来にわたって享受し続けるためには、環境をコントロールできる養殖技術の重要性がますます高まっていくことでしょう。

なぜ海は暖かく?私たちにできること

海水温上昇の根本原因は、私たちの経済活動によって排出される温室効果ガスによる地球温暖化です。

「温暖化の原因は、太陽の活動周期ではないか?」という説を聞くこともあります。確かに太陽活動も地球の気候に影響を与えますが、近年の急激な気温上昇は、温室効果ガスの濃度上昇と明確に相関しており、人間活動が主な原因であるというのが、世界の科学者たちの共通見解です。

このままの経済活動を続ければ、「地球の資源は100年もたない」とまで言われています。壮大すぎる問題に、自分一人が何かしても変わらない、と感じてしまうかもしれません。「省エネやリサイクルなんて、焼け石に水だ」という声も聞こえてきます。

確かに、一つの対策だけで劇的な効果は得られないかもしれません。しかし、だからこそ、多くの人が、できることから少しずつ取り組む「包括的なアプローチ」が重要なのです。

・エネルギーの選択: 自宅の電気を再生可能エネルギー由来のプランに切り替える。

・移動手段の見直し: 近場は車ではなく徒歩や自転車で。公共交通機関を積極的に利用する。

・省エネ・節電: 使わない電気はこまめに消す。断熱性能の高い家に住む。

・食生活: 地産地消を心がけ、フードロスを減らす。

政府や企業による大規模な取り組みはもちろん不可欠ですが、私たち一人ひとりの消費行動が変われば、社会全体を動かす大きな力になります。

未来へつなぐ、あの感動の味

あの余市のウニ丼の、舌の上でとろける甘さと幸福感。あの感動を、自分の子供や、さらにその先の世代にも味わってもらいたい。心からそう思います。

美味しいウニを食べ続けるために。そして、豊かな海の恵みを未来へと引き継ぐために。

遠い未来の話ではなく、今、私たちの食卓と地球の未来が直接つながっている。あの一杯のウニ丼が、私にその大切な事実を教えてくれました。

まずは、使っていない部屋の電気を消すことから。明日は、少し遠回りして駅まで歩いてみることから。できることは、きっと身近なところにたくさんあるはずです。

お問い合わせ

お問い合わせはこちら

髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役