先日、あるチャリティコンサートに足を運ぶ機会がありました。そこで私が見たのは、まさに「本物」のエンターテイメントでした。その名も「KAWAMURA BAND(カワムラバンド)」。
サザンオールスターズのトリビュートバンド(ご本人たちは「コピーバンド」ではなく「トリビュートバンド」と称されています)として、その世界ではあまりにも有名な彼ら。何を隠そう、あの桑田佳祐さんご本人が「唯一認めた」と公言しているグループです。
ついに訪れた「初体験」
KAWAMURA BANDの存在は、もちろん以前から知っていました。テレビやYouTubeでも、その驚異的な「そっくりさん」ぶりは何度も目にしていました。
「本当に桑田佳祐にそっくりな歌い方、そしてあの独特な動作。すごいな」
画面越しにも伝わるそのクオリティの高さに、いつかは生で見てみたいとずっと思っていました。これまでも何度かチャンスはあったものの、不思議とタイミングが合わず、見送ってきました。
そして今回、チャリティコンサートの出演者として彼らの名前を見つけたのです。「今度こそ」と胸を躍らせて会場に向かいました。
想像を遥かに超えた「プロ」のステージ
コンサートが始まり、いよいよKAWAMURA BANDの登場です。
YouTubeで予習していた通り、いや、それ以上です。生で見るボーカルの河村和範さんの姿、声、歌い回し、手の動き、足の運び、客席への煽り…。どれを取っても「桑田佳祐」そのもの。サザンのライブに来ているかのような錯覚に陥ります。
しかし、私が本当に度肝を抜かれたのは、歌そのものだけではありませんでした。
曲と曲の間の「トーク(MC)」です。
これが、もう、本当に面白い。そして、驚くほどに「桑田佳祐」なのです。
ただ声色を似せているだけではありません。話の組み立て方、間の取り方、ちょっとした毒の含ませ方、そして客席を爆笑の渦に巻き込むユーモアのセンス。「もし桑田さんがここでMCをしたら、きっとこんなことを言うだろうな」と観客が想像するであろうことを、終始一貫してやってのけるのです。
それは「ものまね」という枠を遥かに超えていました。
歌の完全な再現度、そして観客を飽きさせない巧みな話術。これはもう「単なるものまね」ではありません。一つの完成された「ショー」であり、彼らが「まさにプロフェッショナル」であることの証明でした。
私はただただ、感動していました。
35年の重みと、揺るぎない「サザン愛」
後で知ったことですが、彼らがサザンの「真似」を始めてから、実に35年もの歳月が流れているそうです。
35年。
一つのバンドがオリジナル曲で活動を続けることすら困難なこの時代に、「トリビュート」という形で35年間も第一線で走り続け、多くのファンを魅了し続けている。これがいかに凄いことか。
もちろん、彼ら自身のファンクラブも存在し、熱心なファンが全国にいるというのも頷けます。これほどのクオリティとエンターテイメント性、そして何より根底に流れる「サザンオールスターズへの深い愛とリスペクト」があるからこそ、人は惹きつけられるのでしょう。
私も、この一夜ですっかりファンになってしまいました。
あまりの感動に、KAWAMURA BANDを徹底的に調べてみた
あの日の感動が忘れられず、私はKAWAMURA BANDについて詳しく調べてみることにしました。すると、知れば知るほど興味深い事実が次々と出てきたのです。
KAWAMURA BANDとは?
彼らは、福岡県を拠点に活動するサザンオールスターズのトリビュートバンドです。
結成は1990年。リーダーである河村和範さんが、友人の結婚式の二次会で「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない)」を歌ってほしいとバンド出演を依頼されたことがきっかけだったそうです。
バンド名は、1986年に桑田佳祐さんが1年限定で率いた「KUWATA BAND」にあやかって命名されました。この時点で、すでにセンスとリスペクトが溢れています。
驚愕のリーダー「河村和範」氏の二つの顔
このバンドの核であるボーカルの河村和範さん。彼の経歴が、また規格外でした。
生年月日: 1963年1月22日
役割: ボーカル(桑田佳祐 役)
経歴: もともとは、明治43年(1910年)創業という福岡の老舗「カワムラ家具」の5代目社長を務めていらっしゃいました。(同社は2022年に家具販売業を終了されています)
経営者としての一面を持ちながら、同時にステージではあの完璧な「桑田佳祐」を演じきる。まさに「二つの顔」を持つ人物です。
現在は、もちろんKAWAMURA BANDの活動を精力的に続けていらっしゃいます。そのバイタリティこそが、彼のパフォーマンスの源泉なのかもしれません。
サウンドを支える屈強なバンドメンバー
そして、KAWAMURA BANDの凄みは、河村さん一人で成り立っているわけではないことです。あのサザンオールスターズの複雑で分厚いサウンドを再現するため、総勢12名もの大編成で構成されています。
・河村和範 (ボーカル)
・天野正幸 (ギター)
・井上智志 (ベース)
・矢田イサオ (キーボード)
・米倉雅紀 (キーボード)
・村上木綿子 (コーラス)
・大角太郎 (ギター&コーラス)
・河村幸宏 (パーカッション)
・三浦啓慶 (パーカッション)
・伊藤公了 (ドラム)
・長田吉栄 (トランペット)
・近藤壮起 (サックス)ギター、ベース、ドラム、ツインキーボード、ツインパーカッション、コーラス、そしてホーンセクション(トランペット、サックス)。この鉄壁の布陣があるからこそ、あの完璧な「サザンサウンド」が生まれるのです。
桑田佳祐「本人」を動かしたオリジナル曲
KAWAMURA BANDを語る上で欠かせないエピソードが、彼らのオリジナル楽曲「君のメロディ」の存在です。
この曲は、河村さんが作詞・作曲を手掛け、本業であった「カワムラ家具」のCMソングとして使用されました。
すると、どうなったか。
あまりのクオリティの高さ、そして桑田佳祐さんに「似すぎている」歌声とメロディラインから、「サザンの新曲か!?」と勘違いしたファンが、サザンオールスターズのオフィシャルファンクラブに問い合わせが殺到するという事態に発展したのです。
この「事件」がきっかけとなり、河村さんはついに桑田佳祐さんご本人と対面を果たします。その際、桑田さんご本人から「頑張ってくださいネ」と、温かい励ましの言葉をかけられたそうです。
「桑田佳祐が唯一認めた」という伝説は、ここから始まっていたのです。
この曲のクオリティは本物で、日本を代表する音楽プロデューサーの亀田誠治さんも、ご自身のラジオ番組でこの曲を取り上げ、「ここまでくると似すぎていて拍手喝采!」と絶賛しています。
全国区での活躍と、活動の原点
彼らの実力は、福岡ローカルに留まりません。
・日本テレビ「世界1のSHOWタイム〜ギャラを決めるのはアナタ〜」
・日本テレビ「行列のできる法律相談所」「ヒルナンデス」
・NHK「なりきりバンド選手権」
など、数々の全国放送のテレビ番組に出演し、その名を全国に轟かせました。横浜BLITZやZepp FUKUOKAでの単独ライブ、ハウステンボスでのステージ、結成20周年記念の全国3大都市ツアーなど、その活動スケールは本家さながらです。
そして、私が彼らに出会った「チャリティコンサート」。 これも彼らの活動の重要な側面でした。
2011年3月11日の東日本大震災の際には、いち早くチャリティー活動を展開。石巻、相馬、富山などの被災地で精力的にライブを行いました。2012年には相馬で「復興サマーフェスティバル」を開催し、1,000人を超える動員を記録したといいます。自分たちの「芸」と「人気」を、社会のために使う。その姿勢にも、真のプロフェッショナリズムを感じずにはいられません。
結論:KAWAMURA BANDは「最高のエンターテイメント」だ
単なる「そっくりさん」を見に行ったつもりが、歌に、トークに、そしてその活動の歴史と信念に、すっかり心を掴まれてしまいました。
彼らは、サザンオールスターズという偉大なバンドへの深い愛情と敬意を胸に、35年という時間で「KAWAMURA BAND」という唯一無二のエンターテイメントを確立した、本物のプロフェッショナル集団でした。
ステージの最後、彼らから嬉しい告知がありました。
2026年4月4日(土)に、福岡市民ホールで記念コンサートが開催されるそうです。
35年以上のキャリアを誇る彼らの、集大成ともいえるステージになることは間違いないでしょう。
「ぜひ、いってみたいものだ」
いや、きっと行くと思います。あの日、あのチャリティコンサートで得た感動と衝撃を、今度はワンマンライブという最高の環境でもう一度、全身で浴びたい。そう強く思っています。
まだ彼らの生のステージを体験したことがない方は、ぜひ一度、足を運んでみてください。サザンファンはもちろん、そうでない方でも、絶対に損はさせない「極上のショー」がそこにはあります。
まずはYouTubeで「KAWAMURA BAND」と検索するだけでも、その凄さの片鱗は味わえるはずです。

髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役