福岡の経営コンサルタント|笑顔商店

人生で忘れられない景色は、たいてい予定外である

——九重で出会ったミヤマキリシマ

先日、あるコミュニティの企画で大分県を訪れる機会があった。

目的は観光ではない。

大分に住む仲間に会うためである。

仕事の打ち合わせでもなければ、営業でもない。

何かを売るためでもないし、何かをお願いするためでもない。

ただ、

「元気にしているかな」

「久しぶりに会いたいね」

そんな想いで集まった旅だった。

もちろん、ミヤマキリシマを見に行く予定などなかった。

名前くらいは聞いたことがあったが、正直なところ詳しくは知らなかった。

「ああ、どこかの山に咲く花だったかな」

その程度の認識だったのである。

しかし旅から帰った今、振り返ってみると最も印象に残っているのは、その仲間が見せてくれた一面ピンク色に染まる山の景色だった。

人生で忘れられない景色は、たいてい予定外である。

そして今思えば、あの日私が出会ったのはミヤマキリシマだけではなかった。

人とのご縁の温かさ。

そして絆というものの正体だったのかもしれない。

大人になると、人に会う理由が必要になる

若い頃は違った。

友人に会う。

仲間に会う。

それだけで十分だった。

しかし大人になると、いつの間にか人に会う理由を求めるようになる。

仕事だから。

営業だから。

相談があるから。

学びがあるから。

何か成果につながるから。

もちろん、それが悪いわけではない。

限られた時間の中で生きている以上、効率を考えるのは当然だ。

しかし最近、少し寂しく感じることもある。

久しぶりに連絡が来たと思ったら営業だった。

会いたいと言われて行ったら勧誘だった。

そんな話は珍しくない。

すると人は警戒する。

「この人は私に会いたいのだろうか」

それとも、

「何か目的があるのだろうか」

と。

だから今回の旅は不思議と心地良かった。

そこには利害関係がなかったからだ。

ただ会いたい。

ただ元気な顔を見たい。

それだけだった。

少しだけ感じていた申し訳なさ

正直に言うと、私は少し気になっていたことがある。

今回集まったのは9名。

決して少ない人数ではない。

受け入れる側からすれば、それなりの準備も必要になる。

しかも平日である。

当然仕事もある。

忙しいに決まっている。

だから、

「迷惑じゃないだろうか」

そんな気持ちがどこかにあった。

ところが現地に着くと、その不安はすぐに消えた。

仲間は本当に嬉しそうに迎えてくれたのである。

「遠いところありがとうございます」

「来てくれて嬉しいです」

そんな気持ちが伝わってきた。

私はその時、歓迎されるというのはこんなにも嬉しいものなのだと改めて感じた。

そして人は、自分が大切にしているものを誰かに見てもらう時に喜びを感じるのかもしれないと思った。

仲間が見せてくれた景色

仲間が運営している自然体験フィールドへ案内してもらった。

そこから見える山々は本当に美しかった。

青空。

新緑。

そして遠くの山肌がところどころピンク色に染まっている。

「あれがミヤマキリシマですよ」

そう教えてもらった。

私は花を見たというより、景色を見た。

山そのものが色づいている。

そんな感覚だった。

あとで近くまで連れて行ってもらうと、小さな花がたくさん咲いていた。

一輪一輪は決して派手ではない。

しかし集まることで山を彩る。

私はその姿を見ながら、どこか人間にも似ているなと思った。

一人ひとりの力は小さい。

しかし集まることで大きな景色を作る。

コミュニティもまた同じなのかもしれない。

まさかスキー場まで行けるとは思わなかった

さらに仲間は、自らが運営しているスキー場にも案内してくれた。

正直、それは想定外だった。

私はスキー場へ行きたいと言ったわけではない。

むしろ、

「そんな場所まで見せてもらえるとは思っていなかった」

というのが本音である。

冬には多くの人で賑わうスキー場。

しかし今は夏。

そこには緑の世界が広がっていた。

そして驚いたのは、ゲレンデを車で下ったことである。

普通なら滑って降りる場所を車で走る。

なかなか経験できることではない。

子供の頃の冒険のような気分だった。

しかし今思えば、スキー場そのものよりも、

「せっかく来たのだから楽しんでもらいたい」

という仲間の気持ちが嬉しかったのだと思う。

本来なら仕事もあっただろう。

やるべきこともあっただろう。

それでも時間を割いてくれた。

案内してくれた。

それが何より有難かった。

夜の宴会で気付いたこと

夜は宴会だった。

久しぶりに会う人もいた。

初めてじっくり話す人もいた。

仕事の話もした。

人生の話もした。

そして、どうでもいい話もたくさんした。

気付けば大笑いしていた。

何かを決めたわけではない。

新しい事業が生まれたわけでもない。

契約が決まったわけでもない。

ただ楽しかった。

それだけである。

しかし今振り返ると、その「それだけ」が実に貴重だったように思う。

最近はタイパやコスパという言葉をよく聞く。

効率よく生きることが求められる時代である。

経営コンサルタントという仕事をしている私自身も、つい効率を考えてしまう。

成果はあったか。

何が決まったか。

何を持ち帰れたか。

しかし人生には、そういう尺度では測れない時間がある。

今回の宴会はまさにそうだった。

人は何をしに集まるのだろう

宴会が終わった後、ふと思った。

私たちは何をしに大分まで来たのだろう。

仕事ではない。

営業でもない。

勉強会でもない。

それでも、

「来てよかったな」

と思っている。

なぜだろう。

考えてみると、人は絆をつくるために会うのかもしれない。

絆というと少し大げさに聞こえる。

しかし人は会うことで相手を知る。

話の内容だけではない。

笑うタイミング。

相づちの打ち方。

周りへの気遣い。

食事の時の様子。

そういう何気ない部分を感じ取っている。

そして無意識のうちに思う。

この人と一緒にいると楽しいな。

また会いたいな。

この人とは気が合うな。

逆に、

少し価値観が違うな。

距離感が合わないな。

そんなことも感じている。

面白いのは、それが理屈では説明できないことだ。

なぜ好きなのか。

なぜ気が合うのか。

聞かれても上手く説明できない。

しかし確かに感じる。

昔から日本人はこれを、

「気が合う」

と言ってきた。

私は運命学や帝王学を学んできたが、気の相性というものは確かにあると思う。

初対面なのに昔から知っていたような感覚になる人もいる。

何度会っても距離が縮まらない人もいる。

それが良い悪いではなく、人には相性というものがあるのだろう。

そして絆というものは、そうした時間の積み重ねの中で少しずつ育っていくのだと思う。

非効率な時間こそ財産になる

考えてみれば、人生で思い出すのは成果ではないことが多い。

契約書ではない。

会議の議事録でもない。

売上の数字でもない。

「あの時、みんなで大笑いしたよね」

「あの時、夜中まで語り合ったよね」

「あの時、あんなことがあったよね」

そんな記憶である。

数年後。

あるいは10年後。

ミヤマキリシマの開花時期は忘れているかもしれない。

宴会で何を話したかも覚えていないかもしれない。

それでも、

「あの時、大分に行ったよね」

「スキー場に連れて行ってもらったよね」

「ゲレンデを車で下ったよね」

「夜中まで笑っていたよね」

そんなことは覚えている気がする。

そしてある日、ふと思う。

「あの人、今どうしているかな」

と。

おそらく絆とは、そういうものなのだろう。

特別な契約を交わして生まれるものではない。

一緒に時間を過ごす。

同じ景色を見る。

同じ空気を吸う。

その積み重ねの先に、いつの間にか育っているものなのかもしれない。

AI時代だからこそ大切になるもの

夜、宿へ戻った後も何となく考えていた。

今回の旅で何が一番良かったのだろうと。

ミヤマキリシマだろうか。

スキー場だろうか。

宴会だろうか。

どれも楽しかった。

しかし振り返ると、一番嬉しかったのは仲間が時間を作ってくれたことだったような気がする。

忙しい中、仕事の手を止めて案内してくれた。

夜も遅くまで付き合ってくれた。

何かを頼まれたわけでもない。

何かを頼んだわけでもない。

ただ会った。

ただ話した。

ただ笑った。

それだけだった。

最近、AIの進化が話題になっている。

私も仕事でAIを活用している。

きっと近い将来、今以上に多くの仕事をAIが担うようになるのだろう。

効率は上がる。

生産性も上がる。

それは素晴らしいことだと思う。

しかし今回の旅を振り返ると、ふと思うのである。

だからこそ、人間にはこういう時間が必要になるのではないかと。

ただ会う。

ただ話す。

ただ同じ景色を見る。

ただ一緒に笑う。

効率だけを考えれば無駄かもしれない。

しかし、こういう時間があるから人は人とつながる。

絆が生まれる。

そして人生が豊かになる。

人生で忘れられない景色は、たいてい予定外である。

そしてその景色は、人とのご縁が連れてきてくれる。

いや、もしかすると本当に忘れられないのは景色ではないのかもしれない。

その景色を一緒に見た人たちなのかもしれない。

九重の山を彩るミヤマキリシマを思い出しながら、そんなことを考えた。

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髙栁 和浩 笑顔商店株式会社 代表取締役